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2007年10月26日

左官工 久住有生

屈託の無い笑みを浮かべた甘いマスクの男性は、ただ真剣に壁を見つめ続ける。彼は現在、左官職人の中で若手ナンバーワンと評される凄腕の持ち主だ。34歳の久住有生氏。
1月の某日、我々は東京・東五反田にあるインドネシア大使館にて修復作業中の彼にインタビューを行った。
PHOTO:小島哲平 INTERVIEW:上野健太郎

「楽しいから」この仕事を選んだ
世界を舞台に活躍するスーパー左官職人

「生まれて初めての親父からの土産が鏝でした。しかも親父に"こんないい鏝を持っている友達は他におらんやろ"って(笑)。だから子供の頃は、盆と正月に鏝磨きをされられていましたよ。それも今思えば、一つひとつの鏝の違いを覚えさせるための親父なりの教育だったのでしょうね」

幼い頃から鏝を握らされる環境にあった久住氏は、祖父、父と続く親子三代の左官職人。それ故に昔は左官という職業へのアンチテーゼもあったという。が、しかし彼がこの仕事を生涯の職業“に選んだのは、なによりも楽しいから“という理由だったようだ。

「とにかく楽しいですね。だからお金じゃなく、良い仕事をさせて欲しいっていう気持ちの方が強いです。それが出来るなら海外でも何処へでも飛んで行きますよ」

18歳から本格的に左官技術を学び始め、日本はもとより海外でもたくさんの左官を経験してきた。だからこそ自分への甘えや妥協を嫌い、真のモノ作りに徹底してこだわり続けるのだ。

「日本は左官の技術が世界一だと思います。しかし、中には市販の素材をそのまま塗っている職人もいますけど、僕の場合は素材から仕込みますので、独特の色や表情を作り上げることができます。それが本来の左官ですから」

久住氏には現在、弟子であり仲間でありライバルでもある行動を共にする職人が5人いる。驚くことに、その中には女性の姿も見受けられた。

「最近では、左官職人を目指す女の子も増えていますね。うちにも一人居ますけど、彼女はそこらへんの男よりも根性がありますよ。毎日、誰よりも早く現場入りし、一人で練習をして、仕事が終わった後も再び一人で練習をしているのです。もちろん、仕事中は歩くことなく常にかけ足。自分に甘えを許さない子なんです。そもそも職人の世界に男も女も関係ないですけど…」

壁を見つめる彼の後ろ姿に“好きこそものの上手なれ”と言う言葉の意味がわかった気がした。

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

[了]
コーデノロジスト 荒川修作氏 »

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プロフィール くすみなおき。1972年淡路島生まれ。3歳で鏝を握り、18歳から各地へ修行に出かけ左官技術を学ぶ。23歳で『久住有生左官』を開設。その後はドイツ、フランスなど海外でも経験を積み、左官職人の中で若手ナンバーワンと評される。プライベートではサーフィンの虜に。それ故、海の近くの現場にはサーフボードを持参するのだとか。

久住有生オフィシャルサイト
http://www.kusuminaoki.com/

写真1

丹念に磨き上げられた鏝の数々。父上から贈られた鏝は、今でも大切に使っている

写真2

弟子の仕事ぶりを見守る久住氏。彼に憧れこの世界を目指す若者も多い

写真3

仕事で訪れた国は数知れず。海外からの直接指名も多い。

写真4

子供のように無邪気な笑顔でピース♪
正直、イケメンです(笑)