2013年会社設立。“丈夫で美しく長持ちするコンクリート”の実現を目指す
「道路・鉄道の橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物は、国民の生活に不可欠な社会基盤で、それらの健全性が保たれた上に日々の暮らしや経済活動が成り立っています。しかし、高度経済成長期に建設された膨大な数の構造物が老朽化し、使用者や周辺の人々に対する安全性が危惧されています。実際、尊い命が失われるような大事故も起き、維持管理の必要性を痛感しました」と、真鍋社長は会社設立の背景を説明する。
1985年に大阪市立大を卒業した後、PC専業者に入社し、主に新設の設計、施工に携わっていた真鍋社長は在職中の2003年、阪大の松井繁之教授(現名誉教授)の指導のもと『道路橋に適用するチャンネル形状プレキャストPC床版に関する研究』で博士号を取得した。
PC構造は、橋梁種別として40%以上を占めているが、入社当時は維持管理の必要性はあまり認識されていなかったという。先駆的に維持管理不足に警鐘を鳴らしていたのが松井教授や京大の宮川豊章教授。
“橋梁を視る・診る・看る”ことを基本姿勢とし、併せて“丈夫で美しく長持ちするコンクリート”の実現を目的に2013年独立、会社を設立した。
技術力の高さで業務が急増!維持管理時代に頭角を現す。
社名の“CORE”は、「核」という言葉そのものの意味とともに、融合(Composite)、組織化・系統化(Organize)、研究・調査(Reserch)、工学・技術(Engineering)を表現。維持管理にかかわる点検・診断・設計といった様々な分野の技術を融合させ、総合的なコンサルティングサービスを行うのが同社の特徴だ。
「当社には、コンクリートの劣化のメカニズムや補修・補強の設計、施工などに精通した技術者が集まっています。コンクリートのひび割れ一つとっても、原因が塩害やアルカリ骨材反応、中性化など材料そのものにあるのか、あるいは構造に起因するのか正確に究明し、診断結果をもとに補修・補強設計をまとめ、適切な施工方法を提案しています。会社を立ち上げてまだ3年ですが、当社の技術力は関係者から高く評価されています」。
公共事業の維持管理重視の追い風に乗り、初年度から黒字を計上。翌年度は250%の増収、今期はさらに160%増収を見込む。最近は、PC橋梁の詳細調査・診断業務が増加。中でも非破壊検査によるPCグラウト充填度調査とその補修・補強設計業務が特に伸びているそうだ。
新卒学生の奨学金返済を支援!若手の人材の確保・育成を急ぐ。
一方、事業の伸長に備え、人材の確保、育成が急務。
「中小企業のため新卒採用には苦労します。人生の1枚目のカードとして、会社の規模や知名度にひかれるのは仕方がないことです。そうした中で見向いてもらうためには、インセンティブが必要」と、来期の採用では奨学金を借りている場合、返済を支援するため最初の冬の賞与で100万円未満を支給する方針だ。
また、社員は当初の11人から3倍に増えたが、多くが20代と30代の若手。現場でのOJTに加え、専門家による講義や大学との共同研究などで技術、知見を習得させる。土木学会、コンクリート工学会、プレストレストコンクリート工学会など学会活動への参加も奨励。英語の論文を執筆し国際会議で発表する際は、経費を会社が負担する。
「“創生期”と位置づけたこの3年の間で経営の安定軌道に乗せることができ、自信がつきました。次の3年は“成長期”と位置づけ、事業量を現在の2倍程度に拡大し、維持管理分野をけん引する絶対的な存在感のある企業に飛躍させていこうと考えています」。
【取材後記】
今後20年で、建設後50年以上経過する道路橋(橋長2m以上)の割合は、現在の約16%から約65%に拡大すると言われている。国もインフラの維持管理を重要施策の一つに位置づけ、2013年11月に『インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議』で、政府、自治体などのあらゆるインフラを対象にした「インフラ長寿命化基本計画」を決定した。この中で、着実に老朽化対策を実施するため、各インフラの管理者等がインフラ長寿命化計画(行動計画)を作成することが規定された。インフラの維持管理業務の増大が見込まれる中、同社がどう発展し、業界での存在感をさらに高めていくのか注目したい。
[了]
本社:大阪市北区西天満1丁目2番5号 大阪JAビル4F
東京支店:東京都台東区浅草橋3丁目8番5号 VORT浅草橋8F
設立:2013年7月3日
資本金:1,254万円
事業内容:建設コンサルタント
真鍋 英規(まなべ・ひでき)
1962年大阪府生まれ
1985年大阪市立大学工学部土木工学科卒、富士ピー・エスコンクリート株式会社(現・株式会社富士ピー・エス)入社。大阪支店技術部設計課配属
2003年大阪大学大学院工学研究科後期博士課程修了
2007年富士ピー・エスコンクリート土木本部営業管理推進グループリーダー次長
2008年株式会社国際建設技術研究所入社、構造設計部部長
2013年株式会社CORE技術研究所設立、代表取締役就任
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
« 株式会社環境装備エヌ・エス・イー 代表取締役 中岡勉氏
現場での外観変状調査の状況。
橋梁に発生したひび割れの原因を究明するためにFEM解析(有限要素法)にて応力を算出。
非破壊検査によるPCグラウト充填度調査の状況。
鋼板接着工法が施された床版の健全度を把握するための非破壊検査状況(※1)
(※1)で得られた調査データをKriging(空間的補完)法にて解析し床版の健全度を表した結果
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