2015年9月25日
ライト工業株式会社
施工技術本部 防災技術部 施工開発グループ
宮本 賢人 氏
「国土の安全と安心を実現する専門技術者集団」を標ぼうするライト工業株式会社。地盤改良や斜面防災など専門土木分野のトップランナーとして業界をけん引する。近年、大雨による大規模な土砂災害の多発や首都直下地震、南海トラフ地震への懸念から、防災・減災に対する要請が全国的に高まっている。施工技術本部 防災技術部 施工開発グループ長の宮本賢人氏に、土木技術者としての自身の取り組みや技術開発の考え方などを聞いた。
社会から必要とされる仕事であることを実感。
大学で土木工学を専攻した宮本氏が就職したのは2000年。同業他社で6年間勤務した後、2006年にライト工業に転職した。
宮本氏は、自らを公共事業への風当たりが強い時代に鍛えられた世代と表現する。
「建設業界は、長引く不況や公共投資の縮減の影響で厳しい状況が続いていました。13年間、ひたすら現場管理に従事する中で、一つ一つの仕事を大切にして安全、品質、コストに対する感覚を磨き、社会に貢献するという使命を果たしてきました」と振り返る。
それが一転「東日本大震災以降、頻発する自然災害を受け、国土強靱化関連の工事が大幅に増加しています。市民意識も大きく変わりました。以前は、建設業界に対する風当たりが強く、心情的に辛い時もありましたが、いまでは早く防災対策を講じてほしいと、住民の方が一緒になって協力してくれます。建設業界は社会から必要とされている産業なんだと実感でき、やりがいが高まっています」と現況を話す。
2013年からの2年間にわたる国立研究開発法人土木研究所への出向を終え、ことし4月、現在の部署に配属。同社の主力部門の一翼を担う防災技術部で主に斜面防災工法の開発に携わっている。テーマは「効率化」と「危機管理」。開発にあたっては、社内提案制度を活用して現場からの要望やアイデアをくみ上げる。
10年先、20年先を見据えた技術研究・開発に挑戦。
「斜面防災工事は常に危険と背中合わせ。一つの事故や小さなミスでも、長年にわたり築き上げてきた会社の信頼を一瞬にして失う恐れがあります。そうした危険の芽を事前につみ取り、従来の強みと創意工夫を組み合わせ、安全で効率的に作業できる工法の提供を目指しています」。
同社は2014年、クレーンの先端に特殊なアームとノズルを取り付け、遠隔操作でモルタルを斜面に吹き付ける「RoboーShot工法」を実用化した。高所斜面での人力作業を不要とし、施工能力を5倍に高めた。安全、省人化を可能とする機械化施工として展開を図っている。
土木研究所での2年間の経験は、宮本氏の視野を広げた。
「土木研究所では、行政や大学、民間企業などからさまざまな研究者が集まり、10年、20年先を見据えた研究を行っています。会社の業績向上の面で実効性の高い技術はもちろん、長期的な視点で、安心で豊かな社会の実現に寄与する革新的な技術の開発にも挑戦したいと考えています」。
【取材後記】
9月上旬、秋雨前線が停滞する日本列島を襲った台風18号、17号は記録的な大雨をもたらし、各地で土砂災害や河川はんらんなどの被害が相次いだ。ここ数年、毎年のように自然災害に見舞われているが、改めて防災・減災対策の必要性を痛感させられた。政府も政策の一つの重要な柱として防災・減災対策に注力している。安全、安心な国土の実現には建設業は不可欠な産業。同社の高度な技術力が防災・減災に役立ち、それにより建設業界全体の正しい社会的認知が高まることを期待したい。
[了]
本社:東京都千代田区九段北四丁目2番35号
創業:1943年7月1日
資本金:61億1947万5000円
事業内容:建設業(法面保護工事/斜面安定・防災工事/地盤改良工事/杭・連続壁工事/管布設工事/環境対策工事/調査(汚染、地盤)/構造物補修・補強工事/建築工事
宮本 賢人(みやもと・まさと)
1975年 岡山県生まれ
2000年 愛媛大学大学院理工学工学科土木海洋工学専攻修士課程修了
2000年 東興建設株式会社(現東興ジオテック株式会社)入社、大阪支店工事部配属
2006年 ライト工業株式会社入社、西日本支社施工技術第一グループ配属
2013年 独立行政法人(現国立研究開発法人)土木研究所出向、土砂管理研究グループ 地すべりチーム交流研究員
2015年 ライト工業株式会社 施工技術本部 防災技術部配属
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
« (株)大矢運送 代表取締役 大矢 一彦氏|
(株)オリエンタル白石 施工・技術本部技術部補修補強チーム 永吉 雄太氏
施工開発グループ執務風景
Robo-Shotの施工状況1
Robo-Shotの施工状況2
ロービングウォール工法の施工状況
ユニラップ工法(完了)