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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2015年2月27日

新ケミカル商事株式会社 代表取締役社長

上田 哲則

2004年8月の設立から10年間に売り上げ規模で2倍の成長を遂げた新ケミカル商事株式会社(東京都千代田区)。親会社の変更や取引先倒産に伴う損失発生など数度にわたる難局を乗り越え、安定した事業基盤を築き上げた。初年度(2005年3月期)に250億円弱だった売上高は、今期は560億円(通期ベース)に達している。来期は700億円が見えており、順調に推移している。会社発足以来、経営を担ってきた上田哲則社長にこれまでの主な取り組みや将来の飛躍に向けた施策などを聞いた。

逆境を乗り越え、ゼロから230億円企業へ

同社は新日鉄化学株式会社(現新日鉄住金化学株式会社)の100%子会社として発足したが、親会社の大リストラの中、メーカーには商社機能は不要ということもあり、2006年に株式の90%が、新日鉄化学の出資会社であった日豊興産株式会社(現日豊ホールディングス株式会社)に譲渡された。

「親会社の変更で既存の取引先や商流がとぎれそうになる中、各社に従来通りの取引をお願いし、影響を最小限に食い止めるとともに、自立した新しい収益体制の構築に着手しました」と上田社長は当時の状況を振り返る。

2008年、セメント関連商品を中心とした建材事業に参入。「1976年に8000万tあったセメントの需要は、公共投資が年々縮小し続けた結果、そのころには4000万tにまで落ち込んでいました。しかし、新規の建設投資は減っても老朽インフラの更新や災害対策への投資は不可欠で、セメントの需要が無くなるわけではありません。4000万tの市場でポジションが確保できれば十分事業として成り立つと考え、あえて打って出ました」。
その言葉通り建材を無の状態から220〜230億円の事業に育て上げた。

地域戦略、M&A……。攻めの戦略で業容拡大を目指す

昨年、2018年度までの中期経営計画「NCT−26」を策定。その中で最終年度の売上高目標を1000億円、うち建材事業は300億円に設定した。

建材事業の強化策として進めているのは地域戦略とM&A。この半年間に、130年の歴史を有する京都の老舗建材商社の灰孝本店と提携したほか、マンション床工事などに採用されているボイドスラブ工法のパイオニア企業で、九州地区で同工法の90%のシェアを保有するアイ・エル・シーをパートナー会社化した。

「両社との連携を深めて地域シナジーを発揮するとともに、建材販売と工事施工の事業シナジーにより全国の新規顧客を開拓し、業容を拡大していきたい」とグループ展開の狙いを語る。

建材事業については4月に分社化を予定。 「当社の経営資源は人材。できるだけ多くの社員に経営者になってほしい。その方策として事業ごとに分社化を進め、その初弾が建材事業。当面は社内カンパニーの形になるでしょうが権限はすべて委譲します」と明言する。

上海・香港に拠点設立をはじめアジア市場に積極進出

また化学品、肥料分野では海外事業を加速。2014年4月、中国市場への攻勢を強めるため、既存の新化実(上海)貿易有限公司に加え、香港にポリスチレン系樹脂コンパウンドの製造・販売会社である新凱美塑料香港有限公司を立ち上げた。

さらに2015年は、イスラム教徒が大半を占めるマレーシアで、鶏ふんを燃焼させ、有機肥料の鶏ふん灰を製造すると同時に、燃焼熱を利用してボイラーで蒸気を作り、タービンを回して電力を供給する設備を現地へ導入するMOU(了解覚書)を、ここ数ヶ月以内に締結する予定。これを推進するため、合弁会社を現地の政府系企業と設立する。

「宗教上の理由から鶏肉の消費量の多いイスラム圏では、鶏ふん公害が大きな問題となっており、マレーシアを足がかりにインドネシアなどにも広げていきます」と上田社長はハラルビジネスへの期待を語る。

一方、「会社を大きくすることが目的ではありません」と強調。 「真の目的は社員の幸せ。会社が大きくなり、やりがいを持ってより良い仕事をしてもらえれば収益が増え、その分を社員に還元できます。また、社会貢献のため、7年前から積極的に取り組んできたメセナ活動も継続して行っていきます。1000億円という数字はあくまでもそのための指標」と述べながら、「CSRの精神に基づく順法と適切な利益配分により社会に貢献できる会社こそが目指す姿」と上田社長は話す。

【取材後記】
2015年2月1日に、福岡・北九州市立響ホールで会社設立10周年を記念した演奏会が開かれた。同社と数年来支援を続けている北九州音楽協会の共催で、能楽と洋楽の両方を楽しめるプログラムを用意した。上田社長自身、能楽をたしなみ、大鼓(おおかわ)は趣味の域を超え準師範の腕前。演奏会のポスターには、大鼓を演じる上田社長を能楽のイメージモデルとして使用した。「習い事は、人生を豊かにする。発想が柔軟になり、仕事にも役立つ」と、同社では社員が習い事をする際に10万円をサポートする。そうした取り組みにも、社員の幸せを大切にする上田社長の思いが込められているようだ。

[了]

本社:東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル 8F
設立:2004年8月1日
資本金:4億円
大株主:日豊ホールディングス株式会社90% 新日鉄住金化学株式会社10%
事業内容:有機化学品、無機化学品、肥料、炭素材、コークス、石炭、合成樹脂、電子材料、工業用ガス、建材、環境ビジネス関連、資・機材などの販売、建設工事業
会社HP:http://www.nctcl.co.jp

上田哲則(うえだ・てつのり)
1952年 福岡県生まれ。
1976年 早稲田大学政治経済学部政治学科卒、新日本製鉄化学工業(現新日鉄住金)株式会社入社
1997年 本社樹脂部長
1999年 東洋スチレン株式会社出向 取締役営業副本部長
2001年 新日鉄化学九州製造所総務部長
2003年 参与本社経営企画本部総合企画部担当部長
2004年 新日化興産株式会社代表取締役社長
      新ケミカル商事株式会社代表取締役社長
2011年 代表取締役会長
2014年 代表取締役社長

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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無機化学品取扱品目の一つ、アンモニアのタンク

2014年8月9日に秋葉原ダイビルで開かれた10周年記念式典であいさつする上田社長

2014年8月9日に秋葉原ダイビルで開かれた10周年記念式典の様子

2015年2月1日の10周年記念演奏会の様子

太鼓を演じる上田社長