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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2014年09月26日

株式会社地圏総合コンサルタント 地盤技術部課長代理

中川 清森

住鉱コンサルタント(株)の建設コンサルタント部門を分割承継し、2010年10月に建設技術研究所の子会社として設立された(株)地圏総合コンサルタント(東京都荒川区、佐野節夫社長)。再出発から4年。現在の事業状況や今後の展開などについて地盤技術部課長代理の中川清森氏に話を聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞

地質分野の強みを活かし、河川系事業で大きな成果。

「この数年で事業の新たな柱が育ち、特に河川系と地質系の受注が伸びています」と中川氏。
河川系で成果を上げている業務の一つが、河川堤防の質的整備に関する業務だ。 国土交通省が1997年に「河川堤防の浸透に対する調査要領」、2002年に「河川堤防設計指針」を策定したのを機に、河川堤防の耐浸透性や耐侵食性など所要の機能を評価する案件が増加した。

地質分野を強みとしていた同社は、河川分野を新たな領域に取り込もうと、中川氏を中心に浸透流解析および安定解析を用いた河川堤防の浸透に関する安定性評価業務を数多く受託する。

地質分野で蓄積した経験を活かし、解析に必要な地盤モデルや地盤物性値を適切に設定し、精度の高い解析結果を得ることを目指し、発注者のニーズに親切・丁寧に応えることで発注者側から高い評価を得てきた。
このことが、現在、多くの質的整備対策工設計業務や樋管・樋門維持管理業務の受託に繋がっている。

「当時は、浸透流解析を用いた河川堤防の評価方法を熟知している技術者が社内には少なかったため、すべてが試行錯誤の連続でした」と振り返る。

業界でも稀な“レベル2地震動”を前提とした鉱山たい積場の安定性解析。

中川氏は2009年から2年間、土木研究所(茨城県つくば市)の地質チームに出向。河川堤防基礎地盤のパイピング抵抗性試験機の製作、室内実験に携わった。

「計画、実験、失敗、検証の繰り返し。意見交換やフィードバックの大切さを学び、非常に有意義でした」。

現在、原位置試験機の開発段階に入り、中川氏も引き続き原位置試験の開発に参画している。

東日本大震災後は、休廃止鉱山たい積場の耐震安定性評価業務を相次ぎ受託。地震により一部の鉱山から鉱滓(さい)が流出したのを受け、経済産業省は集積場技術指針を改正し、それまで考慮されていなかったレベル2地震動(将来にわたって想定される最強の地震動)に対する安定性評価を追加した。そのため鉱山管理会社では、レベル2地震動の耐震評価を実施する必要が生じた。

「レベル2地震動を前提とした鉱山たい積場の安定性解析を行える会社は業界全体でも少ない。1963年に鉱山関連会社として創業した当社にとって、たい積場での安定性解析はもともと得意とする領域。長年にわたって蓄積してきた技術や知見および今まで経験してきた解析技術を活用し、鉱山管理会社の要請に応えていきたい」。

自らの経験を活かし新事業・新領域の創出に意欲を燃やす。

近年、多発している集中豪雨、今後の発生が懸念される東南海、南海トラフなどの巨大地震に備え、河川堤防や鉱山たい積場の安定性確保の重要性は一層増している。

「自社の中で経験者が少ない業務を何度も担当し、その都度、大きな達成感や充実感を味わうことができました。自分が経験してきた業務のやり方が当社のモデルとなり、業容の拡大につながっていると思うと張り合いも出て来ます。鉱山たい積場のレベル2地震動安定性解析技術は、鉱山たい積場に限らず河川堤防、ため池の堤防、道路の高盛土など地下水のある様々な土の構造物の地震動解析評価に応用できます。付加価値のある技術としてさらに磨きをかけ、新領域の開拓、新事業の創出を加速させていきます」

入社して17年。地盤技術部門の主力として中川氏の役割はますます高まりそうだ。

【取材後記】
“地圏”とは、地球を構成する大気圏、岩石圏、水域圏が交わる領域。自社の事業の強みや特色が表現された社名は、4年の間に浸透してきた。数年来、各地で従来の概念を越えた自然災害が発生し、防災・減災対策の重要性が高まっている。大手と一線を画した同社の専門的な調査・解析技術で、災害リスクが軽減されることを期待したい。

[了]

本社:東京都荒川区西日暮里2丁目26番2号
設立:2010年10月1日
資本金:1億円
代表:代表取締役社長 佐野 節夫
事業内容:地質調査・解析/河川/砂防・防災/道路・その他、国際協力

中川 清森(なかがわ・せいしん)
1973年 愛知県生まれ
1997年 東洋大学工学部土木工学科(現環境建設学科)卒、住鉱コンサルタント入社
2011年 会社承継により現株式会社地圏総合コンサルタント所属
2014年 地盤技術部課長代理
これまでの主な担当プロジェクトに「最上川上流堤防詳細調査業務」(局長表彰)、「桜堤防技術検討業務」 (局長表彰)、「休廃止鉱山堆積場安定性検討業務」など

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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