2014年07月25日
株式会社トマック 代表取締役社長
改田 昌生氏
海上構造物の築造や沿岸部の防災、船舶通行の安全確保などに不可欠な海洋土木工事。海洋国家を自認する日本にとって、港湾・海洋の環境整備は国際競争力の強化に向けた重要な国家戦略に位置づけられている。浚渫・埋立・海底地盤改良で国内有数の作業船団と高度な専門技術を擁する東洋建設(株)のグループ会社、(株)トマック(東京都江東区)の改田昌生社長に、事業概要や海洋工事の醍醐味などについて聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞
国内有数の作業船団と優れた技術力をもつ海洋工事のプロ集団
「当社は護岸や沈埋トンネルの敷設、埋め立て用土砂を陸揚げする揚土、ヘドロ層の改良、海底掘削などを主力事業とし、歴史に残る多くの大型プロジェクトに参画できるのが強みです。例えば関西国際空港、中部国際空港、羽田空港再拡張の建設工事でも当社の作業船が活躍しました」と改田社長は自社の優位性をこう話す。
同社は、大型のポンプ浚渫船2艘、揚土船2艘、深層混合処理船3艘などを保有し、親会社だけでなく大手ゼネコン、マリコンの協力会社として海洋工事を手がけている。現在、完工高の4割が元請けと他社下請けで、本年度始動した東洋建設グループの新3カ年中期経営計画の期間中に5割への拡大を目指し、受注力の強化、新分野の開拓を図っている。
「若い職員が多く、機動力が高いのも当社の特色。大型船の船長といえば、以前は50歳以上のベテランが普通でしたが、いまは高校卒業後20年くらいの職員もいます。大卒、高卒を問わず、本人のがんばり次第でチャンスを与えており、張り合いのある社風が醸成されています」
工事見学会や地元小学校の行事を支援!地域社会との絆を深める。
一般的な建設会社の場合、当面目指すポジションが所長なのに対し、海上技能職の多い同社では甲板長、機関長さらに船長となる。船長は、ウインチ操作や揚土作業などを行う甲板部門と機械、装置の運転を管理する機関部門を統括し、工事全体を指揮する。
責任ある立場になるには、小型船舶操縦士や海上起重作業管理技士、海上特殊無線技士などの専門資格に加えて、土木施工管理技士の資格も必要だ。進む道を方向付けるのは本人だが、必要な資格を随時取得できるよう会社がサポートする。
受注増を実現するための課題は、人材の確保だ。
「東日本大震災で被災した港湾インフラの復旧や国際コンテナ戦略港湾工事などで事業量が増加し、人手不足感が実際に出始めまています。昨年初めて2人の経験者を中途採用しました。新卒については、大卒者の応募が少ない中で、以前は東北地方と九州地方の工業高校からの採用が多かったのですが、震災後は復興需要で東北地方の工業高校卒業生が地元に就職するようになり、募集人数に達していません。海洋土木の魅力を外部に発信し、やりがいのある仕事ということを訴えるため、社会貢献にも力を入れています」と改田社長は話す。
2年前から江東区民や同区の公務員宿舎で避難生活を送っている福島県民などを対象に、屋形船で海側から高潮対策工事の現場や下町の風景を見る見学会、水上バスを使った港湾整備工事見学会、浚渫工事現場と東京オリンピック開催予定地の見学会などを開催。そのほか地元小学校が行っている地域清掃活動や持久走大会の運営を支援している。
「関係者からは、近隣コミュニケーションの向上、絆の堅持・深化に寄与したと、非常に喜ばれています。このような活動を地道に継続することで建設業のイメージを改善し、人材の集まる産業となるよう寄与していきたいと思います」。
【取材後記】
海洋土木工事を主力事業とする建設会社をマリコン(マリンコンストラクター)と一般的に言うが、実際にどんな仕事をしているのか、建築工事や都市土木と違って目にする機会がほとんど無い。地元区民や子供を対象にした見学会は、業界として画期的で、海洋土木の重要性を理解してもらううえでも非常に有意義だ。同社の社会貢献活動が、自社の事業の発展とともに建設業全体の魅力向上につながると期待したい。
[了]
本社:東京都江東区青海二丁目4番24号 青海フロンティアビル
設立:1990年4月2日
資本金:1億円
事業内容:土木一式工事業、しゅんせつ工事業、とび・土工工事業、石工事業他
改田 昌生(かいだ・まさお)
1954年2月生まれ。
1977年3月大阪大学工学部土木工学科卒
1977年4月東洋建設株式会社入社
1996年4月高知営業所長
2005年4月四国支店土木部長
2010年4月北陸支店長
2012年4月株式会社トマック顧問
2012年6月代表取締役社長就任
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
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(株)日新 代表取締役社長 角田 充広氏|
(株) 地圏総合コンサルタント 地盤技術部課長代理 中川 清森氏
豊洲防潮護岸建設工事
グラブ浚渫作業状況
揚土船(第二東揚号)
教育指導(OJT)
屋形船での現場見学会
営を支援している地元小学校の持久走の様子