2014年03月28日
BiC株式会社 代表取締役
髙木 幸三郎氏
コンクリート構造物建設に必要不可欠な型枠保持部材の「インサートコン」「止水コン」「スピードコン」などを開発・製造・販売している業界トップメーカーのBiC株式会社(東京都中野区・髙木幸三郎社長)。
髙木社長に開発に至る経緯などを、自身の足跡をたどりながら伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞
座右の銘は「情熱と勇気、そして好奇心」
これまでに取得したパテントは100件を超える。会社の壁に掛けられた額は「情熱と勇気、そして好奇心」、そしてトーマス・エジソンの「ほかにもっと良い方法が必ずあるはずだ。さがしなさい!」。
髙木社長の原動力となる言葉だ。バイタリティーにあふれ、常に新たな創造への意欲がみなぎっている髙木社長は、新製品を世に送り続けている。近年は国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に多数登録され、一層評価が高まっている。
1972年、日本初のコンクリート天井に部材・機材を取り付けるカラースチール・インサートという金属製埋め込みネジ式天井インサートを多種類にわたって開発。
「世の中に役立つモノを考え、アイデアを形に」をモットーに、次々とオリジナル製品を生み出し、天井インサートのトップメーカーとして株式会社三門の地位を確立した。
東京ミッドタウン建設工事の採用数は200万個以上!
1994年、BiCの前身となる会社を設立。コンクリート壁面に使用する型枠保持用埋めコンを開発した。従来はPコンを使い型枠解体後、保持に使用されていたPコンを取り外し、左官工がモルタルをつくって、こてで穴跡埋めをしていた。
従来工法の場合、大規模工事では、Pコン穴が数十万から数百万カ所にもあるため、穴埋め作業に膨大な時間と手間を要していたという。
髙木社長は、こうしたPコン穴跡のモルタル穴埋めを不要とするモルタル成型防水タイプ先付け埋めコンを発案。これまで様々なタイプを商品化している。開発に至るまで、昼夜を問わずモルタルと奮闘。図面作成から素材モルタルの研究など、未知の分野に苦労を重ねた結果、100KNの高強度(建材試験センターの試験済み)を開発し、現場から納得される製品が完成した。
東京都港区の東京ミッドタウンの建設工事では、「止水コン」「クリートコン」が200万個以上採用された。またゼネコンからの要請を受け、業界初の先付埋めコン面落化粧仕上げタイプも考案、製品化した。直近では、発生が危惧されている巨大地震への備えとして、外壁タイル落下防止埋めコン「モルタルキャッチャー」を開発。防錆・防腐食・防水かぶり厚対応品も合わせて開発するなど、新たな展開を見せている。
次の夢は「床」のナンバー1!
「会社規模は小さいが、BiCが消滅したら建設現場に混乱が生じる」−そんな存在価値の高い会社と髙木社長は自負する。
6年前に医療ミスで右目を失明。「会社閉鎖を考えるのが一般的だが、このままで自分に負けてしまう。研究途上の商品も多数残っており、天井(上)、壁(中)の次は、床(下)でナンバー1を目指したい」。
「豊かな創造力、燃える情熱、怯懦(きょうだ)をしりぞける勇気、安易を振り捨てる冒険心を持ち続けていることが“青春”。理想を失うとき初めて老いる」と詠んだサミュエル・ウルマンの詩を愛する髙木社長らしく、夢はまだまだ尽きない。
【取材後記】
「常に心の冒険をしている」と話す髙木社長が生み出すのは、これまでにない独創性の高い製品ばかり。
だからこそ、BiCの製品には、一度使うと、次の現場でも使いたくなるという施工者を虜にする魅力があるという。
BiC製品は質の高さ、施工性、コストのあらゆる面で、優位性を備えており、資材価格の高騰、労働力不足という現在の建設業界を取り巻く課題の解決にも一役買いそうだ。
[了]
本社所在地:東京都中野区中野3-1-6
設立:1994年(前身のJPN21設立、2006年現社名)
事業内容:型枠組立保持コンの総合研究開発メーカー
髙木幸三郎(たかぎ・こうざぶろう)
1939年東京都生まれ。
1972年三門設立
1994年JPN21設立
1996年日本BiCに社名変更
2006年BiCに社名変更
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
« (株)コンテック 宮地 俊斉氏| (株)小黒組 千代田 則雄氏»
インサートコン/第三世代の埋コン
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スピードコン概要
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