2014年01月31日
ヒロセ株式会社 重仮設事業本部技術部長
井上 茂樹氏
国内初の重仮設資材リース会社として1938年に創業したヒロセ株式会社。
鋼矢板や鋼製山留材、ソイルセメント連続壁、仮設橋梁といった重仮設資材のリース事業と盛土・地山・構造物の補強土事業を柱に、リーディングカンパニーの地歩を固めてきた。
近年は業容拡大に向け相次ぐ戦略投資を実施。
鋼管矢板圧入工事や地下・基礎工事、タワークレーンレンタルの専門会社をグループ化するなど、総合力の強化を図っている。
重仮設事業本部技術部長の井上茂樹氏に仕事への取り組み方や働きがい、同社の強みなどについて聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞
地下工事を舞台裏から支える
「鋼矢板や山留め材は、本設構造物が出来上がれば撤去されますが、最適な重仮設資材があってはじめて安全で円滑な地下工事が可能になります。表舞台に出ることは少ないけれど、事故防止、施工の効率化に不可欠な役割を担っているという気概を持てる仕事です」と井上氏は自負する。
技術の専門分化や業種ごとの役割分担が進んだ今日、重仮設資材についても専門工事会社に一任される傾向が強い。
「重仮設は、土圧、水脈の有無、地盤改良状況など現場条件に最もかなった工法を提案する必要があります。年中、山留の計画に従事している私たちだからこそ、現場のリスクなどを経験的に予測し、その対応を加味しながら経済的にも優れた工法を設計できます。自分の提案が実際に採用され、無事故で工事が完了した時の充実感は格別です」と話す。
愛知万博で自社開発の「プレガーター橋」を初投入
井上氏にとって特に印象深い担当プロジェクトは、2005年に開催された愛知万博の市民パビリオン。解体後に廃材が出ないよう3R(リサイクル、リユース、リディース)をコンセプトに、円形状の屋根の鉄骨に同社が開発した仮設橋梁「プレガーター橋」が使用された。仮橋で建築を構築するのは同社にとって初めてで、十分な強度が確保されていることは確認していたものの、開期中は気が気でなかったそうだ。
技術の継承と人材育成──グループ力を活かし競争力を高める
井上氏が、これから取り組みたいと考えているのは技術・ノウハウの継承と人材育成。
「重仮設の工法は、設計者によって多種多様で、ノウハウや技術が個人に蓄積されています。その個人知を組織知として、どう長く継承していくかが課題です。口で言うほどたやすいことではありませんが、技術部は技術の継承も担う部署だと認識しています。企業の収益の源泉は人です。グループ会社との連携を強化して相乗効果を発揮しながら、リースにとどまらず基礎工事に関連するハード、ソフトをワンストップで提供できる技術力をさらに磨き、人材面でも他社との差別化を図ってきたいと考えています」。
【取材後記】
基礎工事で、土圧や水圧によって掘削地盤が崩れないように支持する山留材。
基礎工事の安全性の確保に必要とされる仮設資材だ。基礎が出来上がれば外され形に残らないが、目に見えない地盤を相手にするため、計画、設計には適切な判断力が求められる。
井上部長の話から、重仮設資材リースのパイオニアとしての技術力に対する自信が伝わってきた。
[了]
本社:大阪本社/大阪市西区南堀江1-12-19 東京本社/東京都江東区東陽4-1-13 東陽セントラルビル
設立:1938年11月25日
資本金:23億4,185万4,009円
従業員数:702名
年商:566億円(2013年3月期)
事業内容:重仮設資材・仮設橋梁などのリース・販売・加工/重仮設の各種工事、ソイル連壁工事/補強土工事及びその開発・提案
井上茂樹(いのうえ・しげき)
1964年12月11日生まれ
1987年ヒロセ入社。名古屋支店工務部技術課配属
2011年大阪本店技術部長
2012年東京本社重仮設事業本部技術部長
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
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