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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2013年12月27日

株式会社アイテック計画

原仲 泰三

国内有数の再開発コンサルタント事務所の株式会社アイテック計画(東京都新宿区、曽根伸穂社長)。 1976年の設立以来、地権者、参画企業、行政、地域住民などとの合意形成を図り、それぞれの地域、時代のニーズに応えながら未来の成長を見据えた街づくりを手がけてきた。 現在、宇都宮大手地区市街地再開発事業などに携わっている事業部長の原仲泰三氏に、同社の事業の特色や再開発コンサルタントという仕事の魅力などを聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞

信頼関係の構築から始まる街づくり

「スタッフが地元に張り付き、地権者一人一人とひざを交えて街づくりを一緒に考えていくのを得意としています」と原仲氏は自社の強みを話す。

市街地再開発の多くは、防災、不燃化、商業の活性化、土地の高度利用などを目的とした行政の施策に基づいた地権者による共同事業だが、再開発ビルの規模や用途、補償・権利交換、資金調達、事業協力者の誘致などを巡って様々な問題が発生する。事業を円滑にまとめあげるためには地権者との良好な信頼関係の構築が不可欠となる。

「特に地方都市の再開発を担当する場合は、実際に数年間そこで暮らし、地元の人と腹を割って話せるお付き合いをしています」

こうした地権者の交流は事業完了後も続き「20年、30年たっても、各地の地権者から地元や身内の行事に招かれるのがうれしく、それも再開発コンサルタントの醍醐味(だいごみ)」と原仲氏はいう。

「人が好き」な人にうってつけな職業

再開発コンサルタントを職業とするうえで必要なのは、人との出会いや事業をまとめあげる仕事が好きなこと。

建築を専攻した原仲氏が大学を卒業した81年当時は、2度にわたるオイルショックによる不況の影響で建設投資が低迷し“建設業冬の時代”と言われていた。

設計事務所やゼネコンが新卒採用を控える中、設立から5年の若い会社ながらニュータウン計画や地域計画で業容を伸ばしていた同社に入社した。「すぐ人と仲良くなれるのが特技」という原仲氏にとって、再開発コンサルタントはうってつけの職業だった。

最初の仕事が「土浦市モール505新商店街地区整備事業」(茨城県)。筑波研究学園都市での国際科学万博の開催(85年)に伴う土浦市内の高架道路建設で用地沿道で移転を余儀なくされた地権者と、延長505mの新商店街を整備した。

最近担当した代表的プロジェクトは「上尾中山道東側地区第一種市街地再開発事業」(埼玉県)。297戸のマンションを核に、住宅、商業・業務施設をコンパクトに配置し、上尾駅前の再生を図った事業で、今年完成した。

高齢、人口減少──。社会のニーズに応える街づくりを推進

「近年、事業協力者となるマンションデベロッパーが増えています。以前は、駅から離れていても広い戸建てに暮らしたいという人が多かったのですが、自動車の運転や移動がおっくうになった高齢者が駅前のマンションに移り住むようになってきました。上尾の再開発マンションの購入者を見ると約4割が50歳以上で、しかも地元の人が大半でした。

進行している宇都宮などの再開発事業でも、不動産やハウスメーカーが事業協力者のコアとなっています。高齢社会、人口減少社会を迎えた日本の市街地再開発は、駅周辺の中心市街地に生活基盤や都市機能を集約するコンパクトシティーに向かっていくでしょう」

30年以上にわたって数多くの再開発事業を手がけてきた原仲氏は、これまでの事例を体系的に整理し、合意形成をより効率的に行うためのツールを作成しようともくろんでいる。

「地権者の年代や所有資産による合意条件をデータベース化し分析することで、地権者間の合意形成に要する期間を短縮し、事業をスピーディーに遂行するための傾向が把握できるのではないかと考えます。まだこのような研究成果は発表されていないようなので、自らの研究テーマとして取り組んでみたいと思っています」。

【取材後記】
日本の各地で、郊外型大規模商業施設の出店、景気停滞などの影響による中心市街地の空洞化が問題となっている。 中心市街地の衰退は人口流出、治安の悪化など負の連鎖を招きかねない。 こうした街の地権者の意見をとりまとめ、活気にあふれた街への再生をプロデュースするのが再開発コンサルタントだ。 高齢化、人口減少社会が一層進む中でも、魅力に満ち、将来にわたって持続可能な街づくりを実現する都市再生プロデューサーの一人として、原仲さんのますますの活躍に期待したい。

[了]

本社所在地:東京都新宿区四谷4丁目28番地 YKBエンサインビル9F
創業:1976年9月
資本金:40,000千円
事業内容:地域計画・都市計画/市街地再開発計画/ニュータウン・住宅団地計画・設計/交通計画・調査/産業施設計画/建築設計・監理/管理運営計画

原仲泰三(はらなか・けんそう)
1957年島根県生まれ
1981年東海大学建築学科卒、アイテック計画入社。現在、事業部長
担当プロジェクトに「与野駅西口寿町地区」(2001年)、「与野駅西口旭町地区」(2003年)、武蔵浦和駅第4街区(2008年)、上尾中山道東側地区(2013年)、武蔵浦和駅第3街区(施工中)など。
広島を拠点に芸術活動を行っているパブリックアーティストの原仲裕三(こうそう)氏は双子の弟。

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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