2013年10月25日
株式会社マサル 取締役副社長
操上 悦郎氏
シーリング防水を柱に総合防水事業を展開する株式会社マサル(東京都江東区・代表取締役社長 苅谷純)。
外壁目地の雨水侵入防止に使われる油性コーキング材の国産化が始まって間もない1957年に設立され、以来、シーリング防水分野のリーディングカンパニーとして業界の発展をけん引してきた。
取締役副社長の操上悦郎氏に、同社の事業の特色、人材育成策などについて聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞
大型建築物のシーリング防水工事で実績多数
シーリング防水は、ガラスやサッシ、コンクリートパネルなど部材間の目地に不定形材料のシーリング材を充てんし雨水侵入を防止する、わが国の建築物になくてはならない技術。目地には大きく、部材が動かないようにしっかりと固定する「ノンワーキングジョイント」と、風や地震による振動や温度変化に起因する部材の伸縮などを吸収、緩和する「ワーキングジョイント」の2種類に分けられ、特にワーキングジョイントには防水機能を維持しながら柔軟性を付加する高度な技術が要求される。
「当社は、わが国初の超高層建築といわれる霞が関ビル(1967年竣工)で、シーリング材の許容伸縮率性能などを考慮し、雨が浸入しても自然と雨水が外に出る目地構造を採用するなど、建築技術の進歩とニーズの変化に対応しながら、最先端の目地設計法や工法を開発、実用化してきました。技術や知見の蓄積量は業界屈指で、建設会社、設計事務所から高い信頼を得ております」」と操上氏は話す。
成長戦略の要は“人財力”
現在はシーリング・メンブレン防水、ビルリニューアル、マンションリニューアルの3事業を展開し、工事プロジェクトごとに営業体制を設けて業容の拡大を図っている。
この成長戦略の基盤となるのが人材。今年4月に始動した3カ年の中期経営計画では、施工管理強化、事故撲滅、営業強化、技術・技能の継承、IT活用の5項目の課題を実現する源泉に“人財育成”を据えている。
8月に、OJTだけに頼らずOff-JTの充実による知識の向上を図るため、次長以下の全社員を対象に24項目にわたる理解度確認テストを実施。理解不足と判定された項目については、月2回開かれる勉強会で知識を習得し、再確認テストを行っている。
施工管理技士の資格取得にも力を入れており、約90人の役職員のうち28人が1級施工管理技士の有資格者となる等、社員のスキルは着実に向上している。
「一人ひとりのレベルが底上げされれば、総合力は大幅に向上します。市場でのシェアと同様、人材面でも圧倒的な強みを作りあげたいと考えています」と力説する。
業界の魅力を多くの学生・若者に伝えたい
東京オリンピックの開催に向けた建設投資や、さらに増加が見込まれるリニューアル工事の需要に対応し、新卒者の定期採用にも努めている。
操上氏は、「これまで国内を代表する数多くのエポックメーキングな建築プロジェクトに参画させていただき、都内の超高層ビルでは7割以上の工事を手がけています。専門工事業としてプロジェクトのマネージメントに携わり、建物が完成したときには大きな達成感とやりがいが実感できる仕事です」と防水工事の魅力を話す操上氏。
「建築系の学生にとって設計事務所、ゼネコン、デベロッパーなどと比べると就職先としての認知度は低いのが実情ですが、建築系学科がある大学に会社説明に出向くなどして、さらに多くの意欲ある学生が入社を志望するよう存在感を高めていきたいと考えています」と、次代を担う人材獲得に意欲を見せる。
【取材後記】
雨の多い日本で、建物に不可欠なのが防水対策。
シーリング工事は、都市景観を構成する建物の外壁やサッシ、カーテンウォールなどからの雨水や外気の浸入を確実に防ぎ、快適な室内環境を実現する重要な役割を果たす。
防水に加え、地震動を緩和する緩衝材としての機能も担う。
防水工事の良し悪しは、建物の品質を左右する要素の一つなのだ。
操上副社長の言葉には、シーリング防水トップ企業としての誇り、技術力への自信、そして一層の社員のスキルアップを図る意気込みが表れている。
[了]
本社所在地:東京都江東区佐賀1丁目9番14号
設立:1957年9月30日
資本金:8億8569万7200円
代表:苅谷 純
従業員数:82名(男66名・女16名)
事業内容:シ−リング防水/防水全般/リニューアル/止水工事/外壁調査・診断/外壁汚染対策工事・クリーニング工事
操上悦郎(くりがみ・えつろう)
1963年3月30日生
1989年3月 株式会社マサル入社
2001年10月 首都圏事業本部シーリング事業部長
2003年6月 取締役
2004年4月 シーリング事業本部副本部長兼シーリング事業本部一部長
2006年4月 工事統括担当兼協力企業育成担当
2008年4月 シーリング・防水事業部長兼工事統括・協力企業育成担当兼営業本部・安全環境本部担当
2010年4月 経営企画室長兼営業統括室部長
2011年4月 経営企画室長兼第3営業部担当
2012年7月 兼内部監査室長
2013年6月 取締役副社長、現在に至る
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
« (株)アクア 相良 範浩氏| 応用地質(株) 富田 正裕氏»
ゴンドラでの作業風景
シーリング工事の様子
技術スキルアップ勉強会
日本を代表するオフィス街の丸の内周辺。ここでも多くの建物の防水工事を手がけている
(株)マサル本社ビル