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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2012年07月27日

カヤバシステムマシナリー株式会社 代表取締役社長

石井 英勝

機械、電気、油圧の技術を組み合わせたシステムを建設、防衛、環境などの分野に供給しているカヤバシステムマシナリー(株)。 日本有数のグローバル企業、KYB(カヤバ工業)の100%出資子会社で、親会社の90年近い歴史の中で培ってきた技術力や信用力を継承し、社会インフラの様々な機能を陰で支えている。 特に劇場空間の演出に不可欠な舞台機構や、地震時の安全、安心を確保する免震・制震装置向けのオイルダンパーのシェアは他社を凌駕(りょうが)している。 石井英勝社長に、同社の特色や事業の展望などを聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞

5年後、10年後を見据えた攻めの製品開発・改良でトップを目指す

同社は、KYBの装置事業部、舞台装置販売会社の(株)カヤバレイステージ、鉱山用機器設計・販売会社の日本鉱機(株)を統合して2004年7月に発足した。

KYB在籍時から一貫して装置事業に携わっている石井社長は「油圧緩衝器、油圧機器などの部品供給が中心の親会社と異なり、部品を組み合わせて付加価値の高いシステムとして提供するとともに、納品後のアフターサービスにも注力しています。常に5年後、10年後を想定し、お客さまのニーズを反映した開発・改良に取り組み、業界ナンバー1の製品群をそろえた企業を目指しています」と自社の特徴と目標を話す。

東京スカイツリーにも採用!免制震装置の豊富な実績

同社の事業は舞台機構、建物装置、免震・制震装置、土木機械、試験装置、環境・産機関連装置、防衛関連装置の7部門で構成され、このうち売り上げの6割近くを舞台機構、建物装置、免制震装置、土木機械の建設4部門が占める。

「堅調なのが、発生が懸念されている大地震への備えとしてニーズが高まっている免制震装置です。中でもマンションの場合、免震構造や制震構造であることを購入条件とするお客さまが増えており、建て主もセールスポイントとして積極的に免制震構造を取り入れています。またマンションに限らず、電波塔や超高層ビルの新築、耐震補強でも当社の免制震装置が採用されています。

代表事例をあげると、六本木ヒルズには356台、5月にオープンしたばかりの東京スカイツリーにも低層棟と合わせて225台のオイルダンパを納入しています。また歴史的建造物の保存にも同社製品が使われており、この秋に完成が予定されている国の重要文化財の東京駅赤レンガ駅舎復原工事では、既存部分の免震化にあたって158台のオイルダンパを納入しました。今後、免制震分野の市場占有率は7割に達すると見ています」と豊富な実績を説明する。

免制震事業は国内だけでなく、2010年からは台湾でも展開。さらに現在、地震リスクの高いトルコや中国内陸部の市場調査を進めているという。

“機電油”の統合技術で最良のシステム、製品を開発

一方、舞台機構は、国や自治体が進める劇場関連施設の新築、改築計画と連動するため、年によって需要に波があるものの、KYBが1985年に舞台装置事業に進出して以来、新国立劇場、国立劇場おきなわ、彩の国・さいたま芸術劇場、まつもと市民・芸術館など日本を代表する多くの劇場の舞台演出に同社製品が使われている。建物装置の採用例では、大分スポーツ公園総合競技場大分銀行ドームの可動屋根開閉システム、ToBiO(古橋廣之進記念浜松市総合水泳場)のプール可動壁などがあげられる。

土木機械の主力は、大断面中硬岩用トンネル掘削機のブームヘッダーに代表される掘削機。50年ほど前、日本鉱機がヨーロッパの技術をベースに鉱山用トンネル掘削向けに開発した建機で、改良を重ねながら現在に至っている。『ブームヘッダーRH−10J−SS』は、玩具メーカーのタカラトミーの『トミカ』シリーズにラインアップされており、人気商品の一つだ。

建築、土木を問わず、どのシステムのコアとなっているのが機械の機、電気の電、油圧の油を意味する〝機電油〟技術。これらの技術を用途、機能に応じて組み合わせ、制御も最適化した装置として製品化する。

三重工場を増設!社会の発展に貢献する企業をめざし、人材採用にも意欲

「技術者にとっては、ものすごくやりがいのある会社です。若手であっても、数百万円から億単位の資材調達や、システム全体の設計などを任される機会が多く、自分なりの工夫やアイデアを仕事に活かすことができます。発足当初は、母体となった会社の在職者でスタートした当社も、いまは新卒、中途の採用も独自に行っています。新卒は機械、電気、制御系の出身者、中途は電機メーカーからの転職者が大半ですが、工事の積算、舞台機構の据え付け工事の現場代理人など建設業での経験者もぜひ採用したいと考えています」

現在、免制震装置の増産や新しい環境装置の生産ラインの新設、実験施設の充実を目的に、研究・開発拠点の三重工場(津市)に2棟の新工場を建設中。石井社長は「当社にとって新たな時代の幕開けと位置づけています。これまで以上に社会の発展に貢献できる製品づくりに取り組んでいきます」と完成を心待ちにしているようだ。

【取材後記】
今後の発生が懸念されている巨大地震への対策として、超高層のマンションやオフィスビルを中心に、免震化あるいは制震化のニーズが急増している。 KYBブランドというと、車両用ショックアブソーバーが最初に思い浮かぶが、免制震装置のオイルダンパーでもトップブランドだ。 免制震のほか舞台機構、建物装置、トンネル掘削機など建築・土木分野の様々な場面で、カヤバシステムマシナリーの存在感を今回の取材を通して認識した。

[了]

カヤバ システム マシナリー(株)
本社所在地:東京都港区芝大門2丁目5番地5号 住友不動産芝大門ビル9階
創業:2004年7月1日
資本金:7億円
事業内容:舞台・建物事業/免制震事業/建設機械事業/シミュレータ事業/環境・産機事業/装備事業/サービス事業
会社HP:http://www.kyb-ksm.co.jp/

石井英勝(いしい・ひでかつ)
1944年4月 東京都出身
1967年4月 明治大学工学部卒業、萱場工業(株)(現KYB)入社
2004年6月 取締役事業部長
2004年7月 カヤバシステムマシナリー(株)代表取締役社長に就任、現在に至る。

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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