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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2012年03月30日

三建設備工業株式会社 技術本部技術研究所

塩谷 正樹

業界に先駆け、実際の建物をZEB(ネットゼロエネルギービル)化する取り組みを開始した三建設備工業(株)。 茨城県つくばみらい市にある「つくばみらい技術センター」の改修に際し、最先端の省エネ技術と再生可能エネルギーとを組み合わせてZEBを実現しようとする試みだ。 「ZEBリニューアルプロジェクトチーム」の一員として、天井放射空調システムなどの性能検証や改良に向けた研究に従事している技術本部技術研究所副主任研究員の塩谷正樹氏に、 つくばみらい技術センターZEB化の要素技術や進ちょく状況などについて聞いた。
取材・構成/日刊建設工業新聞

エネルギー使用量の“見える化”を実現

大学時代に建築学を専攻した塩谷氏は、専門科目の中でも特に関心を持ったのが、室内環境や空調システムといった建築環境工学だったという。就職にあたり「大学で学んだ知識を実務に活かせるのは、設備工事業界」と考え、2003年同社に入社。1年間の現場・設計実務の研修を経た後、希望していた技術研究所に配属された。

つくばみらい技術センターは、1992年に竣工したRC造3階建ての技術研究所施設。設備機器類が更新期を迎えたのにあわせ、2009年からZEBを目指した改修工事に着手した。

第1期改修(2010年1月完了)で、PMV(温冷感指標)制御を用いた独自の地中熱利用放射空調システムをはじめ太陽光発電パネル、自然通風、高断熱複層ガラス、自動調光・人感制御照明などの省エネ技術を2階オフィスエリアに導入した。

地中熱利用放射空調システムは、年間を通して16℃に安定している地下水をくみ上げて熱交換器で採熱・放熱し、冷暖房を行う技術。つくばみらい技術センターでは、冷房時は地下水と熱交換した冷水を、暖房時は地下水を熱源とした汎用水冷チラーで生成した温水をオフィスエリアの天井放射空調や床冷暖房に利用しているほか、空調・照明・コンセントのエネルギーは太陽光発電でまかなっている。

エネルギー使用量やシステム稼働状況などを、リアルタイムにモニターで確認できる「見える化」システムも開発。これらの一連の省エネ技術や見える化技術の信頼性を高めるため、複数の大学と共同研究を進めている。

目標は2015年の“全館ZEB化”

第2期改修(2011年8月完了)は、対象範囲をオフィス部門全体と一部の共用部に拡大。新たに太陽熱集熱パネルを屋上に設置し、その温水を使用した暖房を今期から開始した。今後は、土日など太陽光発電の余剰電力を使って蓄熱槽や躯体などに蓄えた熱を、平日の空調に使用することで、負荷の平準化を図る予定だ。さらに、東京支店の電気事業部と連携し、建物全体のZEBに向けたBEMS(ビル・エネルギー管理システム)を構築することにより、さらなる省電力をすすめていくという。

塩谷氏は、「2010年度には改修前と比べ、オフィスエリアの空調・照明の消費電力量を30%に削減できました。2011年度は25%程度まで下がる見込みです」とこれまでの成果を説明。続けて「ここから先はどんどん難しくなりますが、所員が改修による効果を体感しながら、システムをバージョンアップしたり、運転制御を最適化するチューニングの知見を高めたりして、目標通り2015年に全館ZEB化を達成させます」と決意を語る。

つくばみらいセンターのZEB対象範囲

環境と調和する総合エンジニアリングを目指して――

一方、コストも次の検討課題。「いまは要素技術の確立を優先して研究を進めていますが、お客さまにこれらのシステムを実際に採用していただくには、コストの問題を避けては通れません。投資マインドを刺激できるよう、汎用機器の活用やシステムの簡易化などの方法で初期費用を回収できるレベルまでコストダウンを図る必要があります」

日々、実験や実験データの集積、解析、性能向上に関する研究に明け暮れる塩谷氏は、「自ら考えたシステムが試行錯誤の後、想定通りの機能・性能を発揮したときは、大きな満足感、充実感が得られます」と話しながら、「今後、新築の建物をZEB化しようとするなら、建築計画の段階で省エネ機器や再生可能エネルギーをどのように取り入れるかを考えることが重要です。設計側にも主体的に踏み込んで、環境と調和した総合エンジニアリングを提案していきたい」と設備技術者としての思いを述べる。

【取材後記】
経済産業省は2009年11月、業務用ビルのZEB化に向けたビジョンの提案などをまとめた報告書を発表。 その中で2030年までに新築ビル全体でZEBを実現することを提言した。 三建設備工業は、有限な化石燃料の消費を抑え、地球温暖化を防止するのには、新築ビルだけでなく膨大な既存ビルのZEB化も不可欠という観点から、つくばみらいセンターでZEBの実践に乗り出した。 ZEBの達成予定は、国の目標よりも大幅に前倒しとなる2015年。 東日本大震災を機に、ますます省エネへの関心が高まる中で、同社の取り組みは、ZEB化の先進的なモデルケースとなりそうだ。

[了]

三建設備工業株式会社
本社所在地:東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-8
創業:1946年 
資本金:7億3995万円
代表:取締役社長 松井栄一
事業内容:一般及び産業施設向けの空調設備・給排水衛生設備の設計・施工・メンテナンス
会社HP:http://skk.jp/

塩谷正樹(しおや・まさき)
1978年、茨城県生まれ
2003年宇都宮大学大学院工学研究科博士前期課程建設学専攻修了、三建設備工業入社。現在、技術本部技術研究所副主任研究員として、天井放射空調システムに関する研究開発に従事。
主な取得資格は建築設備士,エネルギー管理士,1級管工事施工管理技師など。

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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つくばみらいセンター外観

天井放射空調を導入しているオフィス

「見える化システム」.でエネルギー使用量やシステム稼働状況などを、リアルタイムに確認できる

地中熱利用放射空調概要図