2012年01月27日
株式会社面川建機製作所 代表取締役
面川 栄四郎氏
金属製建具の分野で、独特な存在感を示す(株)面川建機製作所。
“一品逸品”という思想に基づき、きめ細かく造られた製品は、建築家や建設会社から高い評価を得ている。
創業者の面川栄四郎社長に、ものづくりに対する考え方、最近の業界の動きなどについて伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞
下請けからの脱却
1955年、16歳の誕生日を直前に控えた面川社長は、福島県鏡石町から上京し、サッシドアーの加工、オペレーター(開閉装置)の会社に就職。4年後の59年、20歳でサッシドアーの製造、販売、取り付けを業とする個人商店を東京都荒川区に創業した。まさに裸一貫での起業。しばらくは工場を借り、サッシメーカーからの下請の仕事で生業をたてていた。
時代は高度成長期の最中。住宅・ビル建設の投資拡大に伴いサッシ業界も好況に沸いていた。66年、株式会社に組織変更し、68年に念願の自社工場を埼玉県川口市に建設。さらに2年後の70年、郷里の鏡石町に福島工場を新設した。サッシメーカーの下請からの脱却を図り始めたのもそのころだ。
「当時の一般的なサッシの下請工場では、メーカーから送られてきた設計図に基づいて、製品を造っていました。しかし、待っているだけで次から次へと仕事が舞い込む時代は長くは続かず、いまのままでは、将来にわたって安定した会社経営は見込めないだろうと、直接、建設会社や設計事務所との取引に乗り出したのです」
顧客からのどんな要求にも応えるため、自動化できない手料理のようなものづくりを追求し、設計から製造、施工までを一貫して手がけられる体制を整えていった。
“一品逸品”という想い
面川社長が自社製品に込めた思想は“一品逸品”。「形状や機能が独特で他社では図面も描けないような製品であっても、設計図におこし、加工する技術が当社の強みです。当社の良さを知った現場所長から、新しい現場に移ったときに仕事を回していただいたり、後輩が所長になったときに紹介していただいたりすることで、取引を広げていきました。営業という言葉がありますが、業の営みを大事にして誠心誠意、お客さまの要求に応じることが、真の営業だと考えています」
面川社長の予想通り、右肩上がりの経済は終えんを迎え、過当競争時代に突入する。工場を持たないサッシメーカーが町工場に製造を委託する業界構図の中で、総元請けとなる建設会社の受注金額が低下するにつれ、メーカーも末端の下請工場も適正価格がもらえず、次々と倒産や廃業に追い込まれていったという。
面川社長は、「いち早く下請工場の業態から脱していたからこそ、存続できているのだと思います」と述べながら、「それにしても、いまの受注合戦は行き過ぎ。時の流れに逆らうわけにいかず、泥水だったら清流に変わるのを待つしかない」と苦言を呈する。
著名建築家との間に結ばれた強固な信頼関係
そうは言うものの、同社製品への評価は高く、大手の建築設計事務所や大手建設会社からの依頼はとぎれない。そうそうたる建築家も一目置いており、中でも新居千秋氏とは蜜月関係。20年来にわたって、新居氏の作品には同社の製品が採用されている。2009年の日本建築家協会の日本建築大賞、2010年の建築業協会(現日本建設業連合会)のBCS賞を受賞した大船渡市民文化会館・市立図書館「リアスホール」、昨年12月19日にオープンしたばかりの由利本荘市文化交流館「カダーレ」でも、デザイン性豊かな新居氏の建築にふさわしい金属建具を製作、施工した。
すでに創業から半世紀以上が経過。社員は100人を超えたが、社長一人で切り盛りしていた時期が長かったため、平均年齢は若い。その一人ひとりを手塩に掛けて育ててきた面川社長に言わせると“誰もが子ども”。
「子どもが成人になるのに20年かかるように、高校や大学を卒業して入社した若者が一人前になるのは40歳前後。ようやく最初の育成期間を終えた社員に、裁量を任せられるようになったところです。引き続き、若手の指導にあたりますが、今度は彼らが、次の世代を育てるようになれば、成長への道筋が固まると信じています」。
【取材後記】
同社製品が採用された作品リストを見ると、建築界で大きな話題を呼んだ建物がずらっと並んでいる。
大手メーカーが受注に二の足を踏むような独特な形状の金属建具であっても、設計者のデザインコンセプトにかなった製品に仕上げる技術力とノウハウが同社の〝売り〟だ。
価格の安さが受注の決め手となる市場環境の中で、“一品逸品”を理念に製品づくりに取り組む同社が、存在感のある会社であり続けることを期待したい。
[了]
本社所在地:東京都荒川区町屋4丁目18番14号
設立:1966年5月
資本金:9900万円
代表:面川 栄四郎
従業員数:101名
事業内容:鋼製建具・各種金属工事の施工、・カーテンウォールの設計・製作・取付け、その他装飾加工一式/燃焼煙式原木燻煙乾燥処理装置
企業ホームページ:http://www.geocities.jp/omk95/index.html
面川 栄四郎(おもかわ・えいしろう)
1939年 福島県生まれ。
1959年 東京都荒川区で面川製作所創業
1963年 川口工場(埼玉県川口市)完成
1970年 福島工場(福島県岩瀬郡鏡石町)完成
1982年 株式会社面川建機製作所に組織変更
※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。
« 三和建装(株) 中 衆司氏| 日新工業(株) 相臺(そうだい) 志浩氏»
由利本荘市文化交流館「カダーレ」(秋田県由利本荘市) 2011年
設計:新居千秋都市建築設計、施工:戸田建設
船渡市民文化会館・市立図書館「リアスホール」 2009年
設計:新居千秋都市建築設計、施工:戸田建設
プラウド代官山マンションギャラリー(東京都渋谷区) 2008年
設計:西山建築デザイン事務所、施工:郡リース
川口工場(埼玉県川口市)
福島工場(福島県岩瀬郡鏡石町)
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