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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2011年11月18日

住友大阪セメント株式会社

長岡 誠一

住友大阪セメント(株)の全国9支店それぞれに置かれ、生コンクリート製造業者、コンクリート製品メーカーなどのユーザーサポートや、 コンクリートの主材料となるセメントの安定供給の役割を担う技術センター。 ユーザーのJIS認証や日本コンクリート工学会のコンクリート技士、コンクリート主任技士、コンクリート診断士資格の取得支援、 高度化するコンクリート技術情報の発信・習得支援、自社出荷拠点であるサービスステーション等の維持管理などの業務を行っている。 今回は、大阪支店技術センター長を務める長岡 誠一氏に、技術センターの役割や活動内容についてお話を伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞

ユーザーとの技術協力で差別化

「セメントはミクロで見ると製品ごとに違いがありますが、一般的に汎用セメント製品でメーカーごとの優劣を付けるのは難しい。そこで差別化を図るために重要となるのが、ユーザーとの技術協力です」と語る長岡氏。

大阪支店では生コン業者約170社、コンクリート製品メーカー約30社と取引しているが、その多くが、長期にわたる景気低迷の中で厳しい経営を余儀なくされている。

3年ごとに再受審が義務付けられているJIS認証に組み込まれた細部にわたる品質管理体制の審査項目への対応や、生コン業界が品質管理の透明性や公平性の確保、品質管理体制の確立などを目的に第三者機関を設けて実施している全国統一品質管理監査制度への対応、その制度に適合していると評価された際に付与される『マル適マーク』の取得にも協力している。

「生コンは、コンクリートの設計基準強度に基づき、安全率を見込んで製造されますが、品質管理がおろそかになると、強度不足になる恐れがあります。リスクやロスを未然に防ぐうえで、徹底した品質管理が大切なのです」と長岡氏は断言する。

技術センター、研究所、中研コンサルタントの協業で事業展開

さらに、構造物の長寿命化、環境保全、コスト削減などの要請から多様化、高度化が急速に進んでいるコンクリート構造物のニーズに応えたセメントを提供するのも技術センターの仕事。特に近年、超高強度コンクリート、低発熱コンクリートといった特殊コンクリート向けセメントの引き合いが増えている。

「技術センターは、研究開発組織であるセメント・コンクリート研究所と、材料や構造体、地質などの分析、解析、試験業務などを行うグループ会社の(株)中研コンサルタントと一体で事業を展開しています。このような協業体制によるユーザーサービスは他社にはありません。当社は、SOC(住友大阪セメント)ブランドの確立を中期経営計画の柱に掲げており、我々の活動自体もブランドの一つだと考えています」と長岡氏は技術センターの特色を説明する。

長岡氏は1980年の入社から2008年9月までの28年間、研究所で研究・開発業務に従事。1986年に、当時社会問題となっていたアルカリ骨材反応、塩害などに起因するコンクリートクライシスの研究成果をまとめた論文「骨材のアルカリ反応性とその新判定法」で、同社で初めてセメント協会の論文賞を受賞した。

そのほか、内部に微細な空気をいれたコンクリートの劣化防止効果の実証、1日で30N/mm2の早期強度を発現するコンクリート用の1DAYセメントの開発、空港のスリップホーム工法に使われることがなかった高炉セメントの空港エプロン舗装への適用など、多くの研究実績を積み上げてきた。

経験、人脈を最大限に生かす

「これまでに培ってきた経験や人脈などを最大限に活用し、より充実したユーザーサービスを提供していくのが自らに課した使命です」と長岡氏。

言葉通り、2008年10月に技術センター長に就くと、地区ごとのユーザーで組織される技術会とは別に、ユーザーが元請けや発注者と情報交換できる場として技術交流会を立ち上げ、旧知のゼネコンの技術者を講師に招き、最新の技術動向に関する勉強会を開くなどの取り組みを行っている。

長岡氏は、今年7月に大阪で開かれた日本コンクリート工学会の年次大会で、「生コンクリートの現場を考える」をテーマにした生コンセミナーの総合ディレクターを担当。発注者、ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、生コン業者、大学などの専門家が一堂に会してコンクリートの製造、施工での問題点について討論し、大成功を収めた。そこで新たに知り合った様々な分野の人の中から、今年の技術交流会の講師を依頼する予定という。

長岡氏は、技術センターと研究所の経験から、ユーザーが望むのは未来を見つめた製品だけではなく、日常業務での課題解決のウエイトが大きいと考えている。「ユーザーニーズを把握して、ユーザーニーズにあった製品、サービスを提供し、当社の市場での存在感、信頼性を高めていきたい」と力説する。

【取材後記】
大学の専攻は無機材料工学科だったが、建築学科、土木学科への進学も考えていた長岡氏。 就職先に同社を選んだ際は、建設現場と直接的な関わりが薄い会社と思っていたものの、セメントの用途はほぼ100%建設分野。 結果的に、もともと志望先の一つだった建設業界に間接的に身を投じることとなった長岡氏は、 自身が開発した新しいセメントが明石海峡大橋をはじめとするコンクリートの構造体となって目に見える形として残るところに、大きなやりがいを感じているそうだ。

[了]

住友大阪セメント株式会社
本社所在地:東京都千代田区六番町6番地28
設立:1907年11月29日
資本金:416億円 ※2011年3月末現在
従業員数:単体 1,337人/連結 2,816人 ※2011年3月末現在
事業内容:セメント事業/鉱産品事業/建材事業/光電子・新材料事業/その他事業(二次電池正極材料、不動産賃貸、エンジニアリング、ソフトウエア開発)
企業ホームページ:http://www.soc.co.jp/

長岡誠一(ながおか・せいいち)
1956年4月7日生まれ
1980年3月 京都工芸繊維大学 工芸学部 無機材料工学科卒
1980年4月 大阪セメント入社
1980年6月 セメント・コンクリート研究所配属
2008年10月 大阪支店技術センター長
(受賞歴)
第14回(1986年)セメント協会論文賞「骨材のアルカリ反応性とその新判定法」
1993年度 関西道路研究会 優秀業績賞「超早強コンクリートの転圧コンクリート舗装への適応性に関する検討」
2007年度 関西道路研究会 優秀実績賞「周辺環境に配慮した超早強コンクリートによるRC床版の迅速補強工事」

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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