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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2010年12月17日

ヤクモ株式会社 代表取締役社長

土屋 雅之

“新・環境エンジニアリング企業”を標榜するヤクモ株式会社(東京都品川区、土屋雅之社長)。 1963年の創業以来、一貫して振動・騒音対策に特化した環境改善技術の開発に取り組んできた。 近年は、長年培ってきた防振技術を応用し、免震・制振分野に参入。 さらに地球温暖化問題の解決に向け、省エネ、省CO2に貢献する新しい環境改善技術の開発にも挑戦している。 土屋社長に、事業概要や技術開発方針などについて伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞

騒音・振動対策に特化し事業を拡大

昭和30年代に始まった高度成長期、製造業や建設業が急成長を遂げる一方で、騒音、振動が近隣住民とのトラブルを引き起こしていた。ヤクモは、まさに公害が社会問題化していた最中に、工場や建設現場の振動・騒音を抑制する防振装置と防音パネルのメーカーとして設立された。

その後は公共施設、学校、ホール・劇場、体育館、ホテル、土木構造物などの振動・騒音対策にも事業を拡大し、さらに1990年代半ばからは建物や製造ラインの地震対策としての免震、制振システム分野にも参入。「産業機械」「土木」「建築」「免震・制振」の四つの事業基盤が確立した。中でも免震・制振部門の伸びは著しく、2007年12月期の決算で過去最高の売上高を計上した。

土屋社長が就任したのは2008年6月で、その年も前年に引き続き順調に推移していた。しかし、9月に発生したリーマンショックの影響で民間設備投資が急速に冷え込み、受注が減少。土屋社長は、厳しい船出を強いられることとなった。

こうした経営環境にあって、土屋社長は「振動、騒音の技術では他社の追随を許さない」という自負を胸に、再び攻勢に出る機会をうかがっていた。

「ようやく今年の前半から設備投資に回復の兆しが見られ、受注が増加。来期は大幅なプラスに転じる目途がたった。この2年ほどキャリアに限定していた採用も、来年度から新卒採用を復活させる方針」と土屋社長は話す。

1990年代後半から 免震・制振分野が成長

現在、同社が開発、営業面で強化している商品は、品質確保、事業継続、居住性向上を実現する免震・制振システム。

精密品・高級品工場では、微弱な地震動でも製品品質の低下につながるため、製造ライン向けにアクティブ方式の免制振装置などを提案する。データセンターや研究所、病院、オフィスに対しては、サーバールームやフロアを対象に、許容変位が大きく建物中上層階にも適用できるサーバーラック用免震装置、水平方向の揺れを低減する二次元免震床、上下方向の揺れを対象にした上下免震床、さらに水平方向、上下方向ともに揺れを抑える三次元免震床などをニーズに応じて提供。

高層ビル、道路・鉄道沿いの住宅、ロングスパンの床、渡り廊下などについては、風や交通による振動、歩行振動などを軽減する各種の制振装置を品ぞろえ。直近では駅舎ホームやコンコースなどの天井用に、耐震+防振+耐風性能を兼ね備えた防振Powerハンガーを開発した。

そのほか、売上高の5割を占める土木部門では、リサイクルが可能なレンタル用防音パネルが好評だ。短時間、低コストで組み立てられ、工事が終われば、洗浄して塗装し直し、別の工事現場で再利用できるのが特長で、使用状況も部材ごとに取り付けたICタグで管理している。

最新の勉強会、講習会で最新の研究動向を集積

土屋社長は就任以来、「新しい環境改善技術の開発にチャレンジしよう」というメッセージを社内に向けて発信。それを実行するため、専門分野の大学教授を講師に招いた社内勉強会の開催、日本建築学会、日本機械学会、日本音響材料協会、日本騒音制御工学会、日本振動技術協会などが主催する講習会の受講を通し、振動、音、免制振などに関する最新の研究動向や成果を集めている。これらの取り組みは、顧客に対する技術提案力を高めるための人材育成の一環でもある。

 「社員一人ひとりが振動、騒音の知識を深め、省エネ、省CO2も考慮した独創性の高い技術を開発、提供できる“新・環境エンジニアリング企業”としての地歩を強固にしていきたい」と土屋社長は意欲を述べる。

【取材後記】
都市にあふれる騒音や振動。 同社は振動と音の総合エンジニアリング会社として創業以来、静穏な居住・執務空間の確保、防災に貢献する商品を開発、供給し続けている。 ヤクモの社名が表に出なくても、同社の様々な技術、商品は実に多くの建築、土木構造物などの防音、防振、防災対策に使われているのだ。 技術力に対する揺るぎない自信、地球環境負荷の低減に配慮した新技術への挑戦に投資を惜しまない姿勢は、さらに同社の市場での存在力を高めていくことだろう。

[了]

ヤクモ株式会社
本社所在地:東京都品川区大崎5丁目4-18
設立:1963年5月30日
資本金:6000万円
事業内容:
(1) 振動、騒音の調査・測定とその防止設計・施工、アフターサービス
(2) 防振、防音の材料・装置の製造販売及び施工
(3) 防振・防音用器材
(4) ハイテク関連高精度防振防音装置の開発施工
(5) 超精密除振台の開発及び販売
(6) 免震・制振装置の開発及び販売
(7) 前各号に付帯する一切の業務

土屋 雅之(つちや・まさゆき)
長野県出身・50歳
1983年 京都大学経済学部卒、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行
1989年 ミシガン大学MBA取得
1994年 安田信託銀行ニューヨーク勤務
1997年 ヤクモ株式会社入社
2002年 常務取締役
2005年 専務取締役
2008年 代表取締役社長、現在にいたる

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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都市土木工事等で採用される高性能、高気密の防音パネル「エクセルシャーレ」。
パネルには、周辺環境に調和した絵をデザインしている。

フロアに伝わる上下・水平の地震力を大幅にカットし、サーバールームなどの設備・施設を保護する「3次元免震床」
1.レベリングバルブ:負荷荷重によらず、床レベルを一定に保つ
2.油圧ダンパー:地震時の床の揺れを吸収する
3.空気ばね:床荷重を支えると同時に、地震時は上下方向の揺れを吸収する
4.免震床の歩行感を良くする

空気ばねの下に設置されたボールアイソレーターが、免震床を支えると同時に、地震時の水平方向の揺れを低減

サーバーラック用免震装置「サーバーウテナ」

「文京シビックセンター大ホール」
防振遮音壁で外部からの騒音をシャットアウトするとともに、外部への音漏れも低減する技術を採用

防振、防音、免制振技術の新しい研究・学術成果を習得するため、定期的に社内勉強会が行われる