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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2010年11月05日

国際航業株式会社 代表取締役社長

中原 修

日本を代表する空間情報コンサルティング会社の国際航業(株)。 1947年の創業以来、60年以上にわたって国内外の社会基盤整備を幅広く手がけてきた同社は、2007年10月に国際航業ホールディングス(株)を親会社とする持ち株会社制に移行したのを機に、公共事業に依存した従来型の測量・建設コンサルタントからの脱却を図るため様々な施策を打ち出している。 今回の「働く」では、同社・中原修社長に、確実な飛躍に向けた経営戦略や新たな事業のターゲットなどについて伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞

現在の公共投資は、ピークだった1996年度の半分以下にまで減少しています。このような状況下で、どう事業を拡大していこうとお考えですか。

公共投資の拡大とともに歩んできた測量・建設コンサルタント業界のビジネスモデルはすでに崩壊しています。社会のありようの変化に対応して、当社も技術、サービスを変えていかなければなりません。

公共事業のスキームは、行政の担当者が事業全体を統括し、民間企業に部分部分の業務が委託されるのが一般的で、我々のこれまでの仕事は素材ビジネスに過ぎませんでした。

ただ、そのおかげで専門領域ごとに深掘りされ、精緻で高度な技術を獲得できたのも事実。いまは、それらの技術を世の中の実態に見合った形に再構築し、社会に還元していく時期にきたと認識しています。

そこで、当社が取り組んでいるのが“空間情報技術”と“建設コンサルティング技術”を融合させ、お客様の要求にトータルで応えられるビジネスの創出です。

ターゲットに考えている事業は?

公共市場は新規投資が見込めないものの、戦後に造られた道路、橋などの構造物が一気に劣化してくるという問題を抱えています。単に維持・更新するだけでなく、地理空間情報やグリーン化ソフトを組み込んだ対策を提案していきたいですね。

一方では、公共サービスそのものを受託するような事業も視野に入れています。多くの自治体では、財政がひっぱくしている中にあって、いかに公共サービスの質を落とさずに執行していくかが問われています。

財政的に厳しいのなら、民間と一体となって公共サービスを提供する方法もあるはず。そこで当社では、固定資産の評価業務や上下水道事業などのアウトソーシングを働きかけていきます。さらに、公共、民間市場を対象にLBS(位置情報サービス=ロケーション・ベースド・サービス)とITを組み合わせ、人々の安全、安心な暮らしを支える“地域情報サービス事業”や、都市基盤を効率的に運用して持続的成長を可能とする“スマートシティー事業”も本格化させていきます。

海外市場への展開は?

太陽光発電事業をはじめとする“グリーン・エネルギー事業”を中心に市場を開拓します。

国際航業グループは、2010年度を初年度とする中期経営計画で『グリーン・インフラ企業への挑戦』を目標に掲げ、地球に優しいインフラ構築を“グリーン・インフラストラクチャー”と表現し、世界規模で“グリーン・インフラ事業”を展開する方針を打ち出しました。

今後、需要がありながら国家予算で事業をまかなえない途上国などに、カントリーリスクを補償してインフラファンドを積極的に活用できる手法を提示し、事業を伸ばしていきたいと考えています。

こうした新たな事業基盤を確立し、会社が変貌を遂げるには、人材の育成、確保も重要課題となりますね。

いま強化を急いでいるのは、サービスのフロント部分の人材です。特に、当社が行政のトップクラスへのアプローチを強めている中にあって、フロントの担当者には30年先、50年先を見据えて発注者に事業の必要性を説明し、実施に結びつけられる、高度なリテラシーと広範な知識が必要です。海外のお客様であれば、それぞれの国の歴史観や語学力も問われます。大学院の社会人コースへの派遣、海外留学など含め、人材教育に積極的に投資しています。

外部から採用しているのは、当社にないリソースの技術を保有している人材で、毎年30人程度のキャリア採用を行っています。

同時に次世代を担う若手の定期採用も行っています。以前、新卒採用を控えていた時期があったため、世代ギャップが生じ、事業活動の中核を担う35歳から45歳の中堅層が薄くなっているんですね。

こうした弊害が起こらないよう、20〜40人の一定枠を設けて新卒採用を継続していきます。

【取材後記】
測量・建設コンサルタントが生業としてきた公共事業は縮小の一途をたどり、従来通りの業務だけでは、先細るのは目に見えている。 こうした中で、国際航業は、環境時代、ユビキタス社会のニーズに応えたサービスを立ち上げるなど、様々な戦略を打ち出している。 中原社長の話の端々から、新しい時代の空間情報コンサルティングに変貌を遂げようとする強い決意が伺えた。

[了]

国際航業株式会社
本社所在地:東京都千代田区六番町2
設立:1947年9月12日
資本金:167億2900円
従業員数:1178名(2010年7月1日現在)
事業内容:空間情報コンサルティング(空間情報技術サービス、建設コンサルタントサービス)、RE(Renewable Energy)関連事業、マーケティングおよび位置情報サービス、その他

中原 修(なかはら・おさむ)
札幌市出身・54歳
1978年 国際航業(株)入社
2003年4月 同社・国土空間事業本部営業本部東日本支社長
2007年10月 同社・取締役執行役員東日本事業本部長
2008年1月 同社・代表取締役社長就任
2010年6月国際航業ホールディングス(株)取締役就任

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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