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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2010年7月30日

東亜グラウト工業株式会社

張満良

地盤改良、防災、管路維持分野で独自の領域を切り開いている東亜グラウト工業株式会社。 ニーズを先取りした技術開発の中心的役割を担っている一人が、開発事業室知財部長の張満良さんだ。 中国出身の張さんに日本で働く道を選んだ理由、いまの仕事にかける思いなどについて伺いました。
取材・構成/日刊建設工業新聞

日本の生産の高さを知りたいと留学後、日本企業に就職

1988年、西安の大学で水工土木の研究に従事していた張さんは、中国政府の公費派遣留学生に選ばれ、九州大学大学院に留学した。

そこで目の当たりにしたのは、中国と日本との研究環境には格段の差があるという現実だった。中国の大学では1週間も要するようなデータの解析が、最先端の施設、設備が整備されている日本の大学では1日で完了する。

「日本の技術革新、進歩のスピードが中国よりも早いのは当然と納得しました。一方、日本の生産性の高さにも関心を持っていました。日本は人口が中国の10分の1にすぎないのに、当時の一人あたりのGDP(国内総生産)は、中国の20〜30倍。日本と中国との生産性の違いはどこにあるのかを探るために、日本の会社で働いてみたいと考えるようになりました」。

張さんは、指導教官の楠田哲也教授(現名誉教授)から東亜グラウト工業の大岡伸吉社長(現会長兼務)を紹介されたのを縁に1995年、同社に就職した。

大岡社長との出会いが転換点

中国政府の派遣留学生制度には本来、研究成果を母国の発展に役立てるという目的がある。張さんは、生産性を高めるための企業経営の方法や先進技術などを理解したら数年で、帰国するつもりだったという。

「でも、常に次の時代を見据えた技術を探求し、社員の好奇心を大切にする大岡社長の人柄に感銘し、考えが変わりました。日本にいて違う形で祖国に貢献する」と、同社で働き続けることになった理由を説明する。

同社は、地盤改良からスタートした会社だが、まだインフラ投資が盛んだった20年ほど前に、いずれ地盤改良市場が縮小する時代が来ると予測した大岡社長は、他社に先駆けて斜面・法面防災、下水道維持管理をはじめとする社会施設のメンテナンスの分野に着目。張さんが入社したのは、これらの技術開発が本格化したころだった。

張さんは、頑強なコンクリート擁壁の設置が困難な狭い場所などを対象に、柔構造のネットで崩落土砂を捕捉する斜面対策工法や、非開削で老朽化した下水道管路内面を補修する工法などの開発に携わった。

「当初は、純粋に学問を研究する大学と、利潤を追求する企業とのギャップにとまどいを感じていましたが、開発した技術が人々の暮らしに役立っていることに価値観を見出し、社会に貢献するという技術者としての使命感を強めてきました。価値観を持てば、仕事に対する情熱、楽しさが高まり、その結果、成果と感動が得られるのです」

人々の生活環境を守る技術を提供し続ける

同社の技術開発の基本方針には、大きく“技術寿命を延ばすための改善・改良”“次世代技術の実用化”“異分野進出を可能とする新技術の考案”の3つの考え方がある。

「特に異分野に新規参入する場合は、従来技術を応用しただけでは、既存業者と太刀打ちできません。全く異なる発想の技術が必要です。その例として現在、水道分野を新たなターゲットに、水道管の漏水調査や給水タンク・給水管の洗浄を効率的・経済的に行う新技術の実用化を進めています」。

張さんは現在、技術開発に伴う特許の取得、独占権の確保といった知的財産管理の業務も担っている。特許申請数は、年間でおおむね20件になる。

開発の初期段階で特許を押さえたうえで、小規模の投資を行い、実用化の可能性が高いと判断されれば、各部署から人材を出して本格的な開発に着手する。 同社では、このようにして差別化された技術が生み出されているのだ。

「長年、当社で仕事を続けていられるのは、国籍を問わず他の社員と同じように接し、個人の着想や工夫を技術開発に生かしてくれる役員、同僚のおかげです。周りの人々に感謝しながら、これからも人々の生活環境を守る付加価値の高い技術を開発、提供していきたいと考えています」。

【取材後記】
同社に勤めて15年。 この間、いくつもの新技術の開発にかかわってきた。 いまや同社には欠かせない技術者で、社内の誰からも厚い信頼を集めている。 最近、マイクロバブル、アイスピグを応用した管路洗浄技術の開発に成功。 今後、上水分野でも同社の存在感が高まりそうだ。張さんは、留学前に結婚し、夫婦で来日。 中国の大学で建築を学んだ夫人は、自らの意志で張さんと同じ九州大学大学院に進み、耐震工学を研究。 現在、建築構造技術者として都内の大手建設会社に勤務する。日本で育った大学3年生の一人息子は、数学を専攻しており、張さん一家はいわゆる理系家族だ。

[了]

東亜グラウト工業株式会社
本社所在地:東京都新宿区四谷2-10-3
設立:1958年6月
代表:代表取締役会長兼社長 大岡 伸吉
資本金:授権資本金 6億1000万円/払込資本金1億円(発行済株式345,000株)
事業内容:管路メンテナンス、地盤改良工事、斜面・法面防災、土石流対策の各工法の開発及び調査、計画、工事、メンテナンス等

(ちょう・まんりょう Zhang ManLiang)
1961年1月1日、中国・西安市生まれ
1988年、九州大学大学院留学、水工土木博士課程修了
1995年工学博士取得、東亜グラウト工業(株)入社
2003年日本永住権取得

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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エコハイブリッドライナー工法開発のため、ドイツBBL社で開発会議に参加している張さん。(ドイツ・ランダウ)

下水道取付管工法開発のため、共同開発者ケン・スコット氏を訪問中の張さん(英国・ペンザンス)

アンカー飛び出し防止工法
写真はPC鋼より線束を高さ35bから自由落下させ、アンカー飛び出し防止治具の耐衝撃性能を検証した実証実験の様子。

エコハイブリッドライナー工法
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スマートボールシステム
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インパクトバリア
支柱、ワイヤロープ、バリアネット、衝撃荷重を緩和するブレーキリングで構成される高いエネルギー吸収力を備えた斜面崩壊対策工。

PUC受圧板工法
テーパーコーンを採用したコンクリート受圧板、セットパイプ、ざぶとん裏込め工と各種グラウンドアンカーを組み合わせて斜面、のり面の安定化を図る。