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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2010年5月28日

株式会社横森製作所 代表取締役

有明 利昭

鉄骨階段トップメーカーの横森製作所。通称「ヨコモリ」で知られるその名は内部・外部用階段のブランドとして定着し、超高層ビルでは圧倒的なシェアを誇る。
今回は、同社代表取締役・有明利昭氏に、ヨコモリ式階段の特色や最近のニーズ、建設投資が縮小する中での経営施策などについて話を伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞

自社の強みをどう捉えていますか。

ISOの品質目標で“横森は使う人には安心を、建物を建てる人には安全を、高品質な階段で貢献します”と掲げているように、常にゼネコンや住民の方の要求に答えられる「技術力」「提案力」「より早いレスポンス」、そして「3次元CADを使用した設計から製造・施工までの一貫したシステム」と“国内最大の階段専門メーカー”として全国規模で事業を展開していること——以上、3つが当社の強みだと思います。

来年で会社設立60年を迎える当社は、古くは建築金物の設計・製作・施工を本業としていましたが、超高層時代を迎えた60年代後半に内部用鉄骨階段の『YS階段』を開発して以降、鉄骨階段を主力とした業容に転換しました。

鉄骨階段はもともと、鉄骨加工業者が副業的に現場で施工していたマニュファクチュアリングの分野で、ニッチな市場です。当社はファクトリーオートメーション化して差別化を図り、〝階段屋〟という業種を独自に築き上げてきました。

今では〝ヨコモリ〟の名は階段のブランド名として広く知られ、特に100メートル以上の超高層ビルの8割強に当社の階段が採用されています。話題の東京スカイツリーの階段も、まもなく取り付けが始まります。

中国にも進出されていますね。

95年に、上海の滬東造船所と合弁で上海滬船横森鋼結構有限公司を設立しました。

今のところ事業規模は4億円程度ですが、北京オリンピック(08年)のメインスタジアムとなった通称〝鳥の巣〟で知られる北京国家体育場、上海環球金融中心(森ビル)、金茂大厦、昨年末に完成した広州テレビ・観光塔(広州タワー)などで合弁会社の製品が使われています。

また、2010年5月1日に開幕した上海万博でも日本館、日本産業館、カナダ館、アイルランド館、中国船舶館の5つのパビリオンに納品しました。

『ヨコモリ式階段』の特色は。

以前の鉄骨階段の位置づけは、金属工事か鉄骨工事かの区分が明確ではありませんでした。そこで当社は鉄骨階段も主要構造体の一部ととらえ、より細部にわたって項目を取り決めている鉄骨工事標準仕様書のJASS6を基準としました。

また、躯体とのレベル差をボルトで調整し、階段の取付精度を高める仕組みを他社に先駆けて取り入れました。さらに当社の鉄骨階段は建物に先行して取り付け、工事中は仮設の通路として利用が可能です。養生期間が必要なRC階段と比べると、より安全で、大幅な工期短縮、コスト低減、を実現します。

鉄骨階段の最近のニーズは。

製品のトレーサビリティに対する要求が高まり、溶接強度などを調べるUT(非破壊)検査の履歴の提出が求められるようになっています。

当社はUT検査を行える資格者を育成して、自前で検査体制を整えました。UT検査の対象は、年間15万カ所にもなります。厳しい基準で自主検査したうえで、第三者機関の検査結果をつきあわせ、製品の品質とともにお客さまからの信頼を高めています。

ISO9001また鉄骨製作工場性能評価Mグレードについても、自社の品質管理システムの客観的信頼性を高めるために全国6工場で取得を完了しました。

高い品質を確実に保証する技術力を養うための取り組みは。

4年前から、品質の向上とコストの縮減を目的に、改善発表会と組立コンテストを実施しています。

このうち組立コンテストは、全国の拠点工場で予選を行い、勝ち抜いてきた個人・チームが鉄骨階段の製作時間、出来映えなどを競い、優秀な社員を表彰します。

社員のモチベーションの向上につながっており、有意義な取り組みとして継続的に開催していく方針です。

現在の事業環境は厳しいと思われますが、苦境を乗り切るためのどのような施策をとっていますか。

数年来、プロフィット・パワー・プログレスの“3つのP”を強化しようと、全社員参加型の『Pアップ経営』を推進しています。

社員一人ひとりが経営者の視点に立って利益に対する意識を高め、無駄をなくす創意工夫を凝らし、それを活力とした会社の成長を目指しています。

“売り上げは最大、経費は最小、時間は最短”をキーワードに余剰在庫を抱えない資材購買、効率的な設計作業、リードタイムの短縮などの取り組みを徹底しています。

同時に営業面では、ハウスメーカー向けに規格品の室内階段を提案したり、建築金物を販売したりして、売上高の落ち込みをカバーする努力を行っています。 海外事業も上海の合弁会社を拠点に、戦略的に拡大していきたいと考えています

【取材後記】
高さ100メートルを超える超高層ビルでの同社製階段の採用率は8割以上。上海万博、東京スカイツリーにも採用されるなど、話題のプロジェクトのほとんどに同社がかかわっていると言っても過言でない。
それでも今の事業環境は厳しく、経営的な課題を抱えているようだが、有明社長の話から「ヨコモリ」のブランド力、品質に対する自信を強みに、苦境を乗り切ろうとする決意が伝わってきた。

[了]

株式会社横森製作所
本社所在地:東京都渋谷区幡ヶ谷1−29−2
営業拠点:大阪支店、九州支店、名古屋支店、仙台営業所、北海道営業所、広島営業所、中国合弁会社
創業:1951年12月
設立:1961年12月
資本金:6000万円
従業員数:380名
企業ホームページ:http://www.yokomori.co.jp/

有明利昭(ありあけ・としあき)
1951年11月16日 東京都生まれ
1975年 獨協大卒、西武百貨店入社
1992年 横森製作所入社、取締役就任
1997年 専務取締役に就任
2002年4月1日 代表取締役に就任

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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日本を代表する数々の高層・超高層ビルに採用されている内部用鉄骨階段のベストセラー「YS階段」

強化コンクリートの採用と溶融亜鉛めっき処理で鉄骨階段の“音”と“錆”の解消を実現した「Z55FRC階段」

「三菱一号館」の内部用鉄骨階段

六本木ヒルズの一画にある「グランド ハイアット東京ホテル」のらせん階段

人気ショップが集まる「けやき坂コンプレックス」や総戸数793戸を擁する「レジデンス」など六本木ヒルズの様々な施設に同社の階段が採用されている