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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2010年2月26日

株式会社流機エンジニアリング 常務取締役

西村 司

高度な流体技術を用いた環境対策装置を開発・製造する株式会社流機エンジニアリング。建設現場で発生する粉じんや有害ガスの除去、汚染土壌の浄化、宇宙航空分野の耐環境試験、原子力分野など同社の対象領域は多岐にわたる。
“〜「地下」から「宇宙」まで〜”最適環境の創造に取り組む同社の西村司常務取締役に、現在の事業状況や今後の展開などについて伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞

1977年の創業から33年間、一貫して環境改善に貢献する革新的な技術を追求されてきました。環境問題が大きな課題となっている今日、活躍の場はますます広がりそうですね。

公共事業費の縮減、民間設備投資の抑制など建設市場は依然、厳しい状態が続いています。その一方で、健康増進、地球温暖化防止に対する社会的ニーズが高まり、建設会社は工事現場の作業環境の改善やCO2削減などの取り組みを重視するようになってきました。

当社は、全てビジネスチャンスととらえており、お客さまが求める品質や予算に対し様々な環境装置を考案、実用化し、積極的に提案営業を行っています。前期(09年9月期)の売上高は22億円強で、目標値には至らなかったものの、景気を考えれば十分満足できる結果を残せていると思います。

御社は安定した業績を確保するため特定の企業や建設業界に依存せず、幅広い産業の市場開拓を進めていらっしゃいますね。現在の全体売上高に対し25%程度の「土木事業以外の市場」の比率を、5年後には50%にまで高める目標とか──。

当社の近年の経営のキーワードは“市場シフト”。業態変更とは似て非なるものです。 5年ほど前から当社の強みである流体技術を生かせる市場の開拓として、一般産業、工場、原子力、航空業界などへの営業を強化してきました。

過去にスポーツスタジアムの人工芝クリーナー、繊維の表面処理装置、原子力施設の放射性廃棄物除染装置、HⅡロケットの衝撃力試験装置などの実績がありましたので販路を拡げている状況です。

現在の売上高に占める土木分野の割合は75%ですが、市場シフトをさらに進め、来期は土木市場で20億円、その他市場で10億円の売上を目指しています。

5年後にはその他の市場を建設市場と同規模まで伸ばし、全体の売上目標は40億円を目指しています。そのころには鉄鋼市場も基盤となるでしょうから、続いて3つ目、4つ目と基盤を増やしタコの木の足のような安定した経営が理想と考えています。

また当社は利益の3割を研究開発に投入する方針で、時代の要請に応えた製品を創造していきたいと考えています。

成長市場の中でも、とくに鉄鋼業界に大きな期待を寄せていらっしゃるようですね。
山岳トンネル工事の劣悪な作業環境を改善できる御社の環境装置に対する業界からの評価も高まっています。

製鉄に大量の石炭や鉄鉱石を使用する鉄鋼業界では、原料加工時、排出する排煙、炉の改修、有害ガス対策設備としての環境装置を中心に需要が見込めます。

もちろん、古くから鉄鋼業界に環境装置を供給している大手メーカーはたくさんありますが、これまでの営業活動の中で十分食い込めると確信があります。お客さまが取引先や製品の価値を判断する指標にクオリティー、プライス、サービスがあります。

既存のメーカーは製品のクオリティーに大差はないため、プライスとサービスの違いで勝負していたようです。これに対し、当社の製品は山岳トンネル工事のような他作業と比べて格段に劣悪と称される現場でも、清浄度の高い作業環境を実現できますし、メンテナンスの省力性に注力しております。

先に述べた判断指標で例えるとクオリティーはその技術で抜きん出ており、プライスの競争力も建設市場で鍛えられています。しかもサービスはどんなに厳しい要求でも建設業で“なんとかする”精神が養われていますから、当社は製造業の分野でも高い評価をいただいています

最後に御社の社内や社風についてお聞かせ下さい。

これまで当社の経営理念『環境ソリューションにチャレンジし、創造する喜びを共有する』に従い、この喜びの共有のために、オフィシャル分け隔てなく社員が楽しめる社風を作ってきました。

社員のやりがい、達成感、充実感が、会社のパワーとなり、成長の基盤となるでしょう。

私は経営者の一人として『社内環境ソリューション』をパーソナルミッションに掲げ、社員が抱えている問題を率先して解決することで、働きやすい企業づくりに取り組んでおります。

【取材後記】
開発リスクをおそれず果敢に挑戦する精神で革新的な技術を創出し、この不況下でも創業以来の成長軌道を続けている。 新規市場の開拓にも力を入れ、中長期のビジョンが明確。社員のモチベーションを高める施策も講じており、将来の発展に向けた堅実な経営姿勢が感じられた。

[了]

株式会社 流機エンジニアリング
本社:東京都港区三田3-4-2 COI聖坂ビル5階
設立:1977年5月
資本金:4000万円
売上高:22億円(2009年9月末)
代表:代表取締役社長 西村章
従業員数:85名
企業ホームページ:http://www.ryuki.com/

西村司(にしむら・つかさ)
1973年9月12日 鹿児島県生まれ
1997年1月に(株)流機エンジニアリング入社
2003年10月統括部長
2006年10月常務取締役に就任。現在にいたる

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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この大型集塵機による先端集塵換気の完成により山岳トンネルの坑内環境が飛躍的に向上し、塵肺の撲滅に大きく貢献

更なる改良を重ね、現在でも業界シェアは75%。写真は鹿島建設JVの協力で完成させた吸引ダクトシステム

社名の通り、空気・水・温度・ガス・臭いなどの流体制御が得意な会社。写真はトンネルクーラー(-10℃型)の取付指導時の風景

製鉄所の環境装置やドーム球場の人工芝クリーナーや布・糸ブラストやエマルジョン燃料製造機や原発廃棄物の減容機やHIIAダミー衛星など、幅広い分野で応用技術が活かされている

西村氏が営業時代の環境測定の風景

同時期の造船向け除湿・冷房装置の運転指導の風景。営業でも急なお客様要望に応えられるよう、広くて深い技術が求められる