• HOME
  • (株)エム・テック 代表取締役社長 松野浩史氏
「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2010年1月29日

株式会社エム・テック 代表取締役社長

松野 浩史

2009年10月、老舗建設会社の勝村建設を吸収合併した株式会社エム・テック(さいたま市浦和区)。既存事業のPC(プレストレスト・コンクリート)橋梁工事に加え、一般土木、公共建築の分野への業容拡大を図る。しかし、公共事業は縮減傾向が続いており、建設業界を取り巻く環境は依然として厳しい。こうした中で、代表取締役社長・松野浩史氏はどのような戦略を持って経営に臨み、商機をつかもうとしているのか、お話を伺った。
取材・構成/日刊建設工業新聞

民主党政権は、公共事業削減の政策をさらに推し進めるなど、建設市場はさらに冷え込んでいます。貴社の受注状況はいかがですか。

政権政党が代わって2カ月くらいは新規受注が減りましたが、現在は例年規模に戻っています。

当社の主要分野であるPC橋梁は、耐用年数上、維持や補修が不可欠なため、毎年3000億円規模の工事が発注され、その中で当社も一定量の金額を受注しています。

受注にあたっては、採算に合わない工事は避けることを基本とし、施工の難しさや工期の短さなどから他社が敬遠するような案件にあえて挑みます。その方が、過度な価格競争に陥らず、当社の技術力を駆使することで利益を確保できます。

「コンクリートから人へ」という言葉をどう受け止めていますか。

政策として、税金を公共事業よりも人に使いたいというのは理解できます。しかし、地震や津波など自然災害に備える対策は不十分で、構造物の耐震補強、補修など政策としてやるべき事業はたくさんあります。それは人への投資にほかなりません。

先ごろのハイチの大地震では、政府の政策がおろそかだったことが被害拡大の原因だったと思います。数百年に1度しかない地震であっても、起きてからでは遅く、それに備える対策を打つべきです。

2009年10月、勝村建設を吸収合併しました。今後の事業展開の方針について聞かせて下さい。

PC橋梁事業を強化していくとともに、一般土木、公共建築分野に積極的に参入していきます。ただ合併の狙いは単に事業量を増やすことだけではありません。信用の向上が最大の目的です。

当社は、これまでに橋梁機械の保守会社や農業土木会社とも吸収合併しています。当社は創立から20年あまりにすぎませんが、合併した会社はいずれも長い歴史があり、しっかりとした管理体制、施工体制を築いていました。

また社員構成も世代間のバランスがとれていました。先達の知恵、管理能力、人材を継承してコンプライアンスを徹底し、信用を高めていきたいと考えています。

安定成長を可能とする会社とするために、経営トップとしてどんな理念をお持ちですか。

いまの時代の企業経営に必要なのは人心の収攬(らん)です。社員一人ひとりの心のポテンシャルを高め、すべての心のベクトルが同じ方向に向いた企業づくりをしないと、生き残ることはできないでしょう。

人の心の経営が重要で、そのためには、社員の幸せを最優先しなければなりません。景気が悪くなるとリストラや給与カットを実施する企業が多いようですが、当社はそのような施策は決して行いません。何年勤めても給料があがらず、年を取ったらリストラされるような会社では、優秀な人材が確保できず、会社の成長は見込めません。

当社は、15年前から新卒の定期採用を行っており、ここ3年は毎年30人前後が入社しています。今後5年間、同程度の人数の採用を継続する予定です。そして、プロパー社員と吸収合併した会社の社員が一枚岩となって明るい未来を希求し、社員の誰もが社長になるチャンスのある会社にしたいと考えています。

個人的には、3年ほどで上場の道筋をつけ、次の世代に引き継ぎたいと思っています。

【取材後記】
2010年度の政府予算案で、公共事業関係費は、前年度比18・3%の大幅削減となった。今年は、建設業界にとって、一段と厳しい年になりそうだ。こうした中でも、勝村建設を吸収合併するなどエム・テックの松野社長は、新分野に果敢に挑戦する意欲を見せる。その一方で、「社員の幸せ」を重視した経営を標榜。人材が会社の成長の一番の源泉という強い信念が伺えた。

[了]

株式会社エム・テック
本店:埼玉県さいたま市浦和区高砂2-3-18 関本ビル
東京本社:東京都港区新橋4-24-8 第2東洋海事ビル
設立年月日:1988年10月8日
資本金:4億1637万円
売上高:142億1500万円(2009年7月期)
受注高:144億7900万円(2009年7月期)
従業員数:431名
企業ホームページ:http://www.mtec-con.co.jp/
※2007年3月アグリテック(株)と合併
※2008年10月興進建設(株)と合併
※2009年10月勝村建設(株)と合併

松野浩史(まつの・ひろし)
1952年12月 香川県高松市生まれ
1975年東洋大学工学部土木工学科卒、ピーシー橋梁(株)入社
1980年工事課長
1982年本四架橋工事プロジェクトリーダー兼任
1984年本社部長代理
1988年10月(株)エム・テック設立 代表取締役就任

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

« 向井建設(株) 仕田義人氏 | (株)流機エンジニアリング 常務取締役 西村司氏»

建設WALKERエージェント─建設業界、一人で迷っている人へ─専任アドバイザーが転職活動を徹底支援!サイト掲載前の非公開求人情報も豊富です!

隅田川桜橋 (旧勝村建設受注工事)
所在地 東京都台東区今戸
竣工年 1991/3/13

瑞穂ダム (旧勝村建設受注工事)
所在地 北海道勇払郡早来町瑞穂
竣工年 1998/3/31

桐ヶ丘住宅 (旧勝村建設受注工事)
所在地 東京都北区桐ヶ丘
竣工年2001/2/21

出雲神立からさで大橋
所在地 島根県簸川郡斐川町大字併川
竣工年 2007/3/31

沖縄石川調整池タンク
所在地 沖縄県 うるま市石川山城地内
竣工年 2008/08/31

八木原大橋
所在地 長崎県西海市西彼町八木原地内
竣工年 2009/7/30