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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2009年11月27日

東洋熱工業株式会社
技術統轄本部エンジニアリンググループ設計部主事

田中 登

建築設備は、建物の快適性や安全性、製品の品質を確保する基本要素であるだけでなく、地球温暖化対策の面でも重要な役割を果たすもの。今回は、東洋熱工業(株)技術統轄本部エンジニアリンググループ設計部主事の田中登さんに、建築設備技術者の役割や仕事のおもしろさについてお聞きしました。
取材・構成/日刊建設工業新聞

現場で設計図通り形になっているのを見るたびに、達成感が胸いっぱいに広がります。

建築設計事務所を営む父親の姿を見て育ってきた田中さん。大学時代の専攻は土木工学だったが、卒業後は以前から関心を持っていた設備を仕事に選んだ。

大学時代は土木工学を専攻し、土砂崩れや土壌浸食のメカニズムなどを研究していました。でも就職するにあたっては、建築関係の会社にしようと考えていました。父が建築設計事務所を営んでいて、子どものころからトランシットを三脚に取り付けたりミラーを所定の位置にあわせて持ったりするなど測量の手伝いをすることもあり、建築の仕事を身近に感じていたからです。

また建築も土木も形をつくるという点では同じという思いもあって、建築の中では、以前から関心を持っていた設備業界を仕事に選びました。建築設備の仕事は広範囲にわたるので、土木出身者だからといっても、実務では違和感はありません。当社の技術統轄本部設計部には30人ほどの技術者がいますが、実際に建築系出身者は半分程度で残りは機械系、土木系、化学系など建築以外の出身者です。

入社して配属されたのは技術研究所。ここで3年間、新技術の開発やビルのエネルギー使用量の計測、分析業務などに携わった。

技術研究所での成果の一つは、複数の建物の空調熱源システムを一元的に管理し、面的な省エネルギーを実現するAEMS(エリア・エネルギー・マネジメント・システム)です。AEMSは、建物の運転データを自動集積して分析、診断し、実態評価、不具合の特定、改善項目の抽出、効果試算などを群管理で行うエネルギーソリューションツールです。

省エネ対策には費用が発生するため、実際の改修工事に踏み切れないお客さまもいますが、省エネ法の改正や2020年までに90年度比でCO2を25%削減するという政府の方針を受け、AEMSはお客さまの省エネ対策を支援する有効なシステムになると自負しています。

入社直後に研究に携わったAEMSの概念図

入社4年目、設計部に異動。最初の仕事が栄養ドリンク剤工場の設備設計だった。以来、製薬、食品、化粧品工場の設備設計を数多く手がける。

設計部での最初の仕事は、2万平方メートルもある栄養ドリンク剤工場の空調・給排水、クリーンルーム、ユーティリティーなどの設備設計で、当然経験が浅いため、悪戦苦闘しながらの設計業務でした。

工事が完了し、現場に行く前は、多額の費用を投じた設備が想定通り稼働するのか、計算ミスをしていないかなど怖さもあるのですが、出来上がった設備を目の前にした時、何とも言えない感動がわき上がってきました。
それからも、現場で設計図通り設備が形になっているのを見るたびに、達成感が胸いっぱいに広がります。

またお客さまと打ち合わせをし、話をまとめていくのも楽しい仕事です。お客さまの意見を聞いて設計し、見積もりをするのですが、要望をすべて取り入れると、往々にして予算オーバーになってしまいます。実際に必要な機能かどうかを再検討し、予算以内で収まるシステムを提示します。

大切なのは、自信を持ってお客さまに接することです。こちらが若手でも、しっかり説明すれば理解していただけるし、提案が受け入れられたときの喜びはひとしおですね。

設計業務の中で、自社の優れた技術を積極的に売り込んでいきたいと語る田中さん。特に力を入れている技術が、熱源トータル最適制御だ。

会社の中で図面を描くだけではなく、営業担当者とお客さまに新しい技術を提案するのも設計担当者の仕事です。当社では、冷凍機、ポンプ、ファンなど機器単体それぞれで設定された温度や圧力・流量を制御するのではなく、1年間を通じてシステム全体で最も効率が高い運転をするように、システムの最適ポイントを求めて制御し、CO2発生量やランニングコストを最小にする熱源トータル最適制御システムを実用化しています。

CO2削減分野には現在追い風が吹いており、当システムの採用を積極的に働きかけていきたいと思っています。

田中氏が今もっとも力を入れている熱源トータル最適制御の概念図

[了]

田中登(たなか・のぼる)1980年2月24日埼玉県生まれ。2002年東京電機大学理工学部建設工学科卒、東洋熱工業(株)入社。主に産業施設の空調設備・衛生設備の設計を担当。空気調和・衛生工学会設備士(空調・衛生部門)、1級管工事施工管理技士

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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