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  • 鹿島建設(株)湯西川ダム工事事務所・工事課長 岡山誠 氏
「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2009年5月1日

鹿島建設株式会社 湯西川ダム工事事務所・工事課長

岡山 誠

平家の落人伝説で知られる栃木県の湯西川地区。
その一画で、国土交通省関東地方整備局発注の湯西川ダム本体工事が、鹿島・清水建設JVにより進められている。 同工事で、工程管理の責任を担っているのが工事課長の岡山誠さん。「形に残り、人々の役に立つ仕事に就きたい──」。
こういう思いで建設会社を就職先に選んだ岡山さんに、土木工事の楽しさ、やりがいなどについて語っていただきました。
取材・構成/日刊建設工業新聞

湯西川ダムは、五十里、川俣、川治に続く鬼怒川上流の四つ目の直轄ダムで、同流域のダム建設事業の総仕上げとなるプロジェクトだ。

従来にない工期短縮を目標とする同工事で、工程管理に心血を注ぐJV工事事務所工事課長の岡山誠さんは「ダム建設は、土木工事の集大成。とてもやりがいのある仕事です」と熱く語る。

6時45分、工事事務所前の広場に人だかりができる。第一陣の朝礼だ。
1時間後、今度は第2陣の朝礼。500人を越える人々がこの山あいのダム工事現場で汗を流す。

このプロジェクトは、過去に例を見ない程の工期短縮が至上命題。
通常のダム工事は、天端の掘削工事が完了してからバッチャープラントをはじめとする仮設備を設置しますが、当現場では施工期間を約3ヶ月短縮させているため、当初から500人以上の作業員を投入し、掘削工事の一方で仮設備も組み立てるなど複数の作業を同時並行で進めています。
8時半過ぎには現場に出向き、計画通り工事が進められているか、作業にムダがないかチェックします。午前中に翌日の作業内容を各職長と打ち合わせ、午後1時からの作業間調整会議で、協力会社間の作業について確認し合います。
工期短縮を実現するには、輻輳(ふくそう)した作業を、安全かつ効率的に遂行しなければならず、適切な工程管理が非常に重要となります。

ブルドーザーが山の斜面を縦横に走り、河床部では岩盤を運ぶ大型ダンプが行き交う。
良質な岩盤はサイト内のプラントで破砕、ふるい分けられ、コンクリートの骨材として利用される。

一般的にコンクリートダムの場合、原石山を近くに設け骨材を採取していますが、ここでは現場で掘削した岩盤を骨材に利用しています。良質な骨材かどうかを見極めるため、地質専門の管理者を配置し、選別に配慮しています。
規格に収まる骨材をできるだけ多く採取すれば、外部からの骨材補充も少なく、コスト的にも有利になります。原石山がないうえ、原石山とダムサイトを結ぶ道路も不要なので、この面でもコストダウンや環境保全に寄与しています。

岡山さんは1993年、鹿島に入社。1年間、設計業務に従事した後、葛野川発電所(山梨県大月市)、滝沢ダム(埼玉県秩父市)、胆沢ダム(岩手県奥州市)の現場に配属され、今年1月、湯西川ダムの現場に異動した。単身赴任は3年目になる。

今は工事事務所に併設されている宿舎で生活しています。夜には仕事の合間をぬい、毎日8歳になる息子と電話で話し、そして週末は必ず、片道4時間半をかけて妻と息子が待つ横浜の自宅に帰ります。家族の喜んでくれる笑顔が1週間の疲れを癒やしてくれ、新たな週の始まりに向け元気を与えてくれます。

「目に見える形として残り、多くの人に役立つ仕事に就きたい」。
こんな思いを持って岡山さんは、建設会社に就職した。

建設業界を職業に選んだのは、ありきたりな答えですが、出来るだけ多くの人に役立つ仕事に就きたいと考えたからです。
どんな仕事だって役に立たないものはないけれど、建設業は、自分の仕事が目に見える形として残るところが特長ですね。
特に当現場では"ダム建設は夢造り"を基本理念に、誰もが後世の人々に誇れる社会資本を残そうと強く意識して働いています。ダムは、治水、利水の役目を果たすだけでなく、人々が集まり触れ合う新しい観光スポットにもなります。
加えてダム工事は、各種土木工事の集大成。地山の掘削、アクセス道路の建設、川の迂回(うかい)路構築、地盤改良、コンクリートの打設、橋梁工事など、土木分野の様々な工事が一つの現場に集まり、非常にやりがいのある仕事です。
最近、土木を選択する若者が減っているようですが、将来を担う人材が進んで志望する建設業界となるよう、土木工事の楽しさや、やりがいを伝えていければいいなと思っています。

[了]


【湯西川ダム工事概要】
▼位置=栃木県日光市西川地先
▼形式=重力式コンクリートダム
▼堤高=119メートル
▼堤頂長=320メートル
▼堤体積=103万立方メートル
▼工期=2008年7月29日〜2012年3月25日
▼試験湛水予定日=2011年10月1日
国土交通省関東地方整備局 湯西川ダム工事事務所HP
http://www.ktr.mlit.go.jp/yunishi/

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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岡山 誠 (おかやま・まこと)
1970年1月23日生まれ。鹿児島県出身。1993年3月に東京大学工学部土木工学科を卒業し、同年4月、鹿島建設(株)に入社。
・1993年4月〜1994年3月 関東支店土木部設計課に配属
・1994年4月〜1999年12月 山梨営業所 東電葛野川発電所新設工事
・2000年1月〜2004年12月 埼玉営業所 滝沢ダム本体建設工事
・2005年1月〜2008年12月 盛岡営業所 湯西川ダム堤体盛立工事
・2009年1月〜現在 栃木営業所 湯西川ダム本体建設工事の工事課長として、3年後の竣工を目指す。


現場関係者の数は総勢500名以上!朝礼は2回に分けて行われる

工事の進捗状況を確認する岡山氏

骨材プラント

左岸工事の状況

地盤を掘削するブルドーザー。河床では岩盤を運搬するダンプが行き交う

湯西川ダム完成予想写真