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「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

2009年1月23日

アートディレクター/クリエイティブディレクター

佐藤 可士和氏 第2回

ケータイ、SMAP、ユニクロ、幼稚園……。
プロダクトデザインから企業ブランディングまで、領域にとらわれず、広告・デザインの世界を舞台に進化し続ける佐藤可士和氏。インタビュー第2回目では、博報堂入社から独立まで。日本を代表するアートディレクター/クリエイティブディレクターになるまでの軌跡と、これからについてお話を伺いました。
取材・構成/日刊建設工業新聞

(前回からの続き)

ホンダ『ステップワゴン』が転機に

大学は2浪して多摩美大に入りました。大学時代は最高でした。好きなことばっかりやっていた。アーティスティックな指向ももちろんありました。

自分の中ではメジャー(商業指向)でいくか、インディ(芸術指向)でいくか、揺れてはいましたね。大学3年の時に現役のアートディレクターが多摩美の講師に来られて、リアルな広告の話を聞くことができました。刺激的でしたね。広告が社会に与えるインパクトを実感しました。この時ですね、広告の面白さに目覚めたのは。

それで、この時の講師であり、大学の先輩でもある大貫卓也さんにあこがれて博報堂に入ったんです。もちろん僕はアートディレクターになりたいわけで、博報堂というのは“場”でしかないんですが。

でも、当時の博報堂はクリエーターにとって最高の環境を提供していたと思います。いいものを創ろうという意識がとても強い会社でした。

アートディレクターとしてやっていけるという感触を得たのは、20代後半から30代前半にかけてです。転機になったのはホンダの『ステップワゴン』の広告プロジェクトへの参加でした。

この時は「こどもいっしょにどこいこう」というコピーで、キャンペーンがヒットしましたし、車自体も大ヒットしました。まだ若かったので一スタッフとしての参加でしたが、アートディレクターとして何をすべきなのかが分かったという感触がつかめました。

1998年ごろから、携帯電話の普及によりマス広告の効果が薄れているなあと感じ始めたんです。そんな時に、キリンビバレッジから『キリンレモン』のリニューアルについて相談を受け、『チビレモン』という商品を創って、キャンペーンを展開したんです。商品開発からかかわりました。今の仕事の原型ですね。デザインの力を改めて認識しました。

独立で表現領域広がる

博報堂を辞めたのは、考え方の違いです。広告代理店にとって最上位にあるのは広告だというのは当たり前のことです。デザインというのは広告のためにあるんですね。

でも、ぼくにとってはデザインが最上位にあるんです。このズレは『チビレモン』のキャンペーンで顕在化しました。活動の領域、表現の領域を広げたいと思って独立しました。

博報堂時代に賞もいただきましたし、業界では名前もかなり知られていましたから、独立そのものには不安はありませんでした。実際、独立してみたら思っていたとおりの仕事が舞い込んできました。「思いは伝わるもんだなあ」って実感しましたよ。

独立してすぐに手がけたのがSMAPのCD発売キャンペーン。これを見て「あんなキャンペーンをしたい」っていう企業からの依頼も増えましたね。

もちろん、SMAPと同じことをしたいというんじゃなくて、同じような方法論で会社や商品のブランディングをしてほしいっていう依頼です。やっぱり、僕が真摯に取り組んでいるっていうのが伝わるんでしょうね。だから切り口が評価されるんだと思います。

僕の仕事って企業やアーティスト、ファッションの最先端の情報を、社会にどう伝えるかということに尽きます。だから、仕事はもの凄く刺激的で面白い。何をしても刺激になりますね。

最近は“書籍”という新しいメディアの面白さを知りました。僕は自分で自分に枠をはめたくない。枠からはみ出る。常に殻を破って前に進む。クリエーターとしてそうありたいと思っています。

[了]

佐藤可士和(さとう・かしわ)アートディレクター/クリエイティブディレクター。1965年東京生。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年クリエイティブスタジオ「サムライ」設立。 主な仕事に、スマップなどミュージシャンのアートワーク、NTT docomo「FOMA N702iD / N703iD」のプロダクトデザイン、ユニクロNYグローバル旗艦店のクリエイティブディレクション、楽天グループ、ファーストリテイリングのCI、明治学院大学やふじようちえんのリニューアルプロジェクト、国立新美術館のシンボルマークとサイン計画など。進化する視点と幅広いジャンルでの強力なビジュアル開発力によるトータルなクリエイティブワークは、多方面より高い評価を得ている。明治学院大学客員教授、多摩美術大学客員教授。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞、朝日広告賞、亀倉雄策賞、東京TDC金賞、ほか多数受賞。東京ADC、東京TDC、JAGDA会員。著書に「佐藤可士和の超整理術」(日本経済新聞出版社)。

※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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時代を牽引するヒットメーカーとなった今も、常に“自分の殻を破り続ける”。現状に甘んじないチャレンジスピリッツが、彼の進化をさらに加速させていく——。