「働く」建設WALKER×日刊建設工業新聞社

設計期間中に妊娠。隣人の実家が完成して間もなく、長男を出産。お勤めは難しくなった頃、友人から自宅のための土地の調達から設計監理までの依頼があり、子育てしながらマイペースで仕事をすることにしました。気がつけば、なんだかんだ年に1棟は仕事をしている状態となっていました。

一級建築士免許を取り事務所登録を変更する際、ポリシーを表現し、共感する客に来てもらおうと名付けたのが「オーガニックテーブル」。

そうこうするうち、飛び込んできた仕事が4階建ての住宅で、二級建築士の業務範囲を超えたものでした。一度は知人の一級建築士に紹介したのですが、色々あって再び私のところへ舞い戻ってきたのです。再度、他を紹介するのも不誠実に思え、一級建築士の資格を取るから半年待ってもらえないかと施主に相談したら快く応じてくれて、その時ばかりは真剣に勉強し一級建築士の資格を取りました。それまで、意匠設計事務所に再就職して建築デザインを勉強したいと思っていたのですが、一級建築士の資格を取ってみて、ふと冷静になると、自分はすでに何棟もの建物を建ててしまっている。アフターケアの責任もある。これは無責任に事務所をやめるわけにはいかないんだ。と気がついたわけです。これは腹を括って、継続的な事務所の経営をしていこうと決意しました。そうなると長期的な経営ポリシーも持たねばならない。そこで、一級建築士事務所へ登録変更をする際に、ポリシーが伝わる事務所名をつけることにしました。看板となる名称。「無名の自分の姓名を冠しただけの事務所名では、どんな設計をしてもらえるのかが客にはわからない。事務所名にポリシーを表現し、共感してきてくれる客なら気も合って、良い仕事ができるだろう」と、考えました。

10年前当時、建築業界では今ほど環境問題は重視されていませんでしたが、私の周りには環境の活動家もたくさんいて、これからは環境配慮が重視され、環境と共生する住宅が求められるであろうと感じていました。自分自身もそのような建築しか作りたくないという意識がありました。だから、私にそのような住宅を作らせてくれそうな施主に響くようにと、当時は知る人ぞ知る程度の認知度であった食品の有機認証の『オーガニック』と、家族の集う食卓を中心に住宅を専門に設計する意思表示で『テーブル』という二つを組み合わせて『オーガニックテーブル』と名付けました。
そして、オーガニックテーブル開設の2棟目が隣家と我が家の建替えでした。事務所のポリシーを明確に示し、モデルハウスとするために都市型環境共生実験住宅「アクティブ・エコハウス」を設計したのです。

自邸「アクティブ・エコハウス」を建築。それが放火で火災に。命を救ったのは、行政指導の金属製サッシではなく、こだわったエコ建材の木製サッシだった。善養寺さんは、法律の矛盾とともに天然素材の有効性を確信する。

2000年4月に自邸「アクティブ・エコハウス」が完成し、新聞やテレビなどマスコミで取り上げられました。その建物が、2001年6月未明、就寝中に放火されました。ガレージの車に引火したため、炎は激しく、出口は火に包まれて逃げられず、燃える建物の中に取り残されました。消防隊が到着しても、窓の外も火が回っていて、救出されたのは鎮火した後でした。一緒に取り残された子供は「家は耐火建築だから大丈夫だよね」と、はしゃいでいましたが、そんな状態ではなく、被害は屋内にも迫ってきていて、何かが間違っていたと感じていました。翌日、被災現場を見て、思いもよらなかった事実にショックを受けました。行政指導で変更せざるを得なかったアルミ製の防火戸は陰も形もなく、ぽっかり穴となって事務所を燃やしていました。両親世帯の網入りガラスの入ったスチール製玄関ドアは消防隊が来るまでは頑張って、両親の避難までの時間を確保してくれてはいましたが、消火水による急激な冷却で大きく変形し、ガラスも割れ、構造体に溶接で固定してあった枠も外れてしまっていました。玄関の靴は燃え、室内は煙で煤けていました。消火活動が始まってから被害を広げてしまったことがわかりました。 (次回に続く)

ぜんようじさちこ。 1966年東京生まれ。東京都立工芸高校金属工芸科卒、東京都立品川高等職業技術専門校建築製図科卒。建築構造設計事務所、意匠設計事務所を経て、1993年綱島幸子設計事務所開設。1998年オーガニックテーブルに改称。共著に『家づくりの問答集』建築よろず相談(理工図書)など。現在、環境省中央環境審議会臨時委員、総務省消防審議会委員。
オーガニックテーブルのHP http://www.organic-t.com/

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※記事中のデータ、人物の所属・役職は掲載当時のものです。

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