2025年、建設業界は大きな変革の渦中にある
——「人」「技術」「制度」で読み解く最新動向
2025年、建設業界はかつてない変革の時代を迎えています。
再開発やインフラ需要に支えられて一部市場は堅調である一方、人口減少・人手不足・資材高騰といった課題が深刻化。そこに「2024年問題」に代表される制度改革や、急速に進む建設DXの波が押し寄せ、業界構造そのものが変わろうとしています。
本記事では、建設業界の2025年時点での最新動向と注目ポイントを、わかりやすく解説していきます。
建設市場の現在地:堅調な需要と将来への不安が共存
現在の建設業界は、再開発プロジェクトや半導体工場の建設といった特定分野では堅調な需要が見られます。2023年度の建設8大市場(住宅・オフィス・工場など)の市場規模はおよそ24.3兆円と、前年より拡大しています。
しかし中長期的には、少子高齢化による人口減少や資材価格の高騰、そして国内需要の飽和が市場縮小のリスクとして指摘されています。表面的には好調でも、持続的な成長には「構造改革」が避けて通れない局面を迎えているのです。
「2024年問題」が業界に与えたインパクト
2024年4月、建設業界においても時間外労働の上限規制が適用されました。これにより、これまで「長時間労働」が常態化していた現場の在り方が大きく見直されています。
週休2日制の導入が本格化し、工期や人件費の見直しが必須に。企業側は、限られた時間の中でいかに効率よく工事を進めるかという「新たなマネジメント力」が求められています。
加えて、建設業法・入契法・品確法の一体的改正、いわゆる「担い手三法」によって、労働者の処遇改善やデジタル化が法的にも推進されるようになりました。
深刻化する人手不足と高齢化問題
建設業の現場では、就業者の約35%が55歳以上という高齢化が進行しており、若年層の入職者は年々減少傾向にあります。特に地方や中小規模の企業においては、技術の継承や人材確保が難しくなっており、「人手不足倒産」も増加傾向にあります。
このような中、企業は単なる採用強化だけでなく、魅力的な労働環境づくりや、働きがいのある現場の構築が求められています。
建設DXの波が現場を変える
労働力不足に対応するため、建設業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が加速しています。中でも注目されているのが、以下の技術です。
• BIM(Building Information Modeling)
• ドローンを活用した測量
• ICT建機による自動化
これらの技術は、生産性向上と省人化の両立を可能にし、工期の短縮や安全性の向上にも寄与しています。かつて「ITとは無縁」と思われていた建設業界にも、確実にデジタルの波が押し寄せています。
法改正で下請け保護も強化
制度改革の面でも、業界は大きな転換点を迎えています。
2024年以降、「担い手三法」によって業界全体の構造見直しが進行中。特に注目されるのが、約束手形の支払サイトを60日以内に短縮するなどの取り組みです。これは、下請け企業の資金繰りを改善し、健全な取引環境を整備するための施策であり、建設業界の“持続可能性”に直結しています。
採用環境は依然として厳しい
建設業の初年度平均年収は約514万円と、全産業平均を上回っています。しかしながら、求人数は微減傾向にあり、依然として採用競争は激化しています。
これからの建設企業は、給与水準だけでなく、
• 働きやすさ
• キャリアパスの明確化
• デジタルスキル習得の機会
といった“人材を惹きつける要素”をいかに整備するかが鍵となります。
まとめ:建設業界の未来を決めるのは「人・技術・制度」の三位一体
2025年の建設業界は、単なる景気の波だけで語れる状況ではありません。
「人材確保と育成」「デジタル技術の活用」「制度変化への対応」という三要素を、いかにバランスよく実行していくかが、企業の未来を左右します。
変化を恐れるのではなく、むしろこの変革期をチャンスとして捉えられるかどうか。それが、建設業界の新しい時代を切り拓く第一歩となるでしょう。
なお、建設現場のデジタル化が進む中で、「CADオペレーター」という職種も注目を集めており、設計支援や図面作成のスキルが求められる場面が増えています。